研究課題
小胞体の構造維持に関与するII型膜タンパク質のcytoskeleton-associated protein 4(CKAP4)は、膵がん・肺がん等の種々のがんの細胞膜にも発現している。CKAP4は、Wnt/β-cateninシグナルの構成因子である分泌タンパクDKK1(Dickkopf1)の受容体として機能し、ホスファチジールイノシトール3リン酸キナーゼ(PI3K)とAKTを活性化する事で、がん細胞の増殖を促進することが分かってきた。さらに、CKAP4はDKK1と結合後、エクソソームとして細胞外に分泌される。また抗CKAP4モノクローナル抗体は膵がん細胞株に対して腫瘍増殖抑制効果を示す。本研究では、肺がんにおいてCKAP4が診断と治療のための標的となり得るかを検討した。92例の肺がん患者、および健常者の血清CKAP4濃度をサンドイッチELISA法で測定すると、肺がん患者の血清CKAP4陽性例は18例(19.6%)であり、健常人の6例(6.5%)よりも有意に多かった(P<0.01)。続いて、抗CKAP4抗体を用いた肺がん組織免疫染色を行うと、血清CKAP4陽性率は染色陽性群にて17/70例(24.3%),染色陰性群において1/22例(4.5%)であり、染色陽性と血清CKAP4陽性には有意な相関が見られた(P<0.01)。EGFR変異を持つヒト肺がん細胞のうちDKK1を発現し、かつ細胞膜上にCKAP4を発現している細胞株HCC4006に対して抗CKAP4抗体の投与を行うと、in vivo, in vitroでがん細胞のAKT活性が阻害され、その作用はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬osimertinibとの併用で増強された。以上の結果より、CKAP4陽性肺がんにおいてCKAP4は、血清中に分泌されバイオマーカーとなると共に、肺がんの治療標的分子となり得る可能性が示唆された。
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Translational Lung Cancer Research
巻: 12 ページ: 408~426
10.21037/tlcr-22-571