研究実績の概要 |
ブレオマイシン(Bleomycin, BLM)1.5 mg/kgの気管内投与によるマウス肺線維症モデルの作成を施行していたが、投与後死亡症例数も多く、また投与後の線維化形成も安定した結果が得られないため、高ヒスチジン糖タンパク質 (HRG)の投与は実施できていない。 HRGは好中球の形態・機能の維持効果、血管内皮細胞の保護効果を有することが知られており、これらは肺移植後の早期移植肺機能不全 (PGD)とも関係していると考えられた。また、PGDは末梢気道の線維化を主体とするような慢性肺移植片機能不全 (CLAD)の原因の一つであることも報告されている。当研究室で保有している成人肺移植患者の血液検体 (n = 68)を用いてELISA法による血漿HRG濃度測定を施行した。肺移植後72時間目における血漿HRG濃度に注目し、重度PGD群 (n = 7)とPGD無発症群 (n = 43)、中等度PGD群 (n = 18)で比較検討したところ、重度PGD群はその他のグループと比較して有意に血漿HRG濃度が低下していることを確認した (PGD無発症群 vs. 重度PGD群, P = 0.044; 中等度PGD群 vs. 重度PGD群, P = 0.040)。また、肺移植後の予後予測因子としての血漿HRG濃度の有用性を検討するため, ROC曲線を作成したところ, カットオフ値を34.4 ug/mLとした場合, AUC 0.61 (感度0.44, 特異度0.80)であった. 全生存期間 (OS)およびCLAD無発症期間 (CLAD-free survival)において, 血漿HRG濃度34.4 ug/mL以上の群は血漿HRG濃度34.4 ug/mL未満の群よりも有意に良好であることを確認した (OS, P = 0.037; CLAD-free survival, P = 0.046)。
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