血漿中の高ヒスチジン糖タンパク質(HRG)濃度は肺線維症(IPF)群において健常群より有意に低下していた。本研究の結果より、血漿中のHRGは慢性炎症による肺疾患の代表であるIPFにおいても低下しており、IPFの新たな治療標的となり得ることが示唆された。また、肺移植後患者において血漿中のHRG濃度は肺移植後3日目に最も高値となる傾向があり、特に肺移植後3日目における血漿中のHRG濃度は重度原発性移植片機能不全(PGD)群において有意に低下していた。肺移植後3日目における血漿中のHRG濃度を、肺移植後全生存の指標としてカットオフ値(34.4 μg/mL)を設定したところ、血漿中のHRG濃度が34.4 μg/mL以上の群(HRG高値群)はHRG濃度が34.4 μg/mL未満の群(HRG低値群)と比較して、肺移植後全生存期間(OS)およびCLAD非発症期間(CLAD-free survival)において有意に良好であった。本研究の結果より、肺移植後3日目における血漿中のHRG濃度はPGD重症度と関連しており、また、肺移植後の長期成績とも関連していた。血漿HRG濃度の測定は低侵襲なPGDの新たなバイオマーカーとなり得る可能性が示唆された。肺移植後にHRGを補充することによって、PGDの発症を抑制できる可能性がある。さらに、マウス虚血再灌流障害モデル(I/R)においても血漿中のHRG濃度は有意に発現の低下を認めた。本研究の結果より、IRIによる急性肺障害においても血漿中のHRG濃度は低下していた。IRIはPGDの原因になる病態であり、HRGの投与というPGDに対する新規治療法に応用できる可能性がある。
|