研究実績の概要 |
細胞培養条件の検討等によりiPS細胞から肺オルガノイドを効率的に作成することが可能となった。同様に、多能性幹細胞であるES細胞を用いた検討においても、効率的な肺オルガノイドの作成が可能となった。これらについて、がん遺伝子の過剰発現あるいはがん遺伝子とがん抑制遺伝子変異の組み合わせ(共変異, co-mutation)により、前がん病変様の変化および肺がんの初期腫瘍形成過程を3次元的に再現することに成功した。iPS細胞株由来肺オルガノイドにおいては、がん遺伝子であるHER2を過剰発現させることで前がん病変様の変化を呈し、形態不規則性および増殖能の亢進を認めた。また、ES細胞を用いた検討では、がん抑制遺伝子TP53を欠損させた肺オルガノイドについて、がん遺伝子である変異型KRASを導入することにより、がん化(形態異常と核異型)を認めた。これらの肺がんオルガノイドは、分子標的治療薬への特徴的な薬剤感受性を示し、薬物治療抵抗性克服に向けた新たな知見を得ている。また、作成した肺がんオルガノイドと別途樹立した線維芽細胞株等とを共培養することで、生体内におけるがん微小環境をより精巧に再現したモデルを作製し、肺がんオルガノイドとの相互作用や薬剤感受性の変化等の検討を行っている。
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