研究実績の概要 |
これまで研究代表者は発展途上にある肺再生の分野において、胎仔肺組織移植を中心に基礎研究に取り組み、様々な知見を得てきた。今回、これらの知見を踏まえ、旺盛な増殖能と多能性を持つとされる胎仔肺由来の間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells:MSCs)が肺再生の細胞ソースとして適しているのではないかと考えた。その特徴や優位性を検証するために、胎仔肺由来のMSCsを抽出しその特性を評価すること、さらにヒトに近いブタにおける急性肺障害モデルに気道内投与し、肺再生の修復の過程にどのように寄与するかを検証し、肺の再生医療の一助となることを目的とした。 まず2020年度は、ブタ胎仔肺(Fetal-Lung:FL)からMSCsを単離する技術を確立すること、さらに抽出したFL-MSCsと様々な組織や細胞集団からのMSCsとを比較することを計画した。54日齢のブタ胎仔肺組織を摘出し培養処理後にFicoll-Hypaque(GE Hearth care)での遠心分離により単核細胞を単離した。これらを培養した細胞群において、現在、間葉系マーカー陽性(CD29, CD44, CD90, CD105)・造血マーカー陰性(CD34, CD45)を確認しFL-MSCsを同定している過程にある。これらの細胞群がFL-MSCsであることが確認できれば、ブタ胎仔肺よりMSCsを単離する技術を確立したことになり、これは肺再生の研究において意義のあることと言える。また平行して、6週齢ブタの肺組織、大腿骨の骨髄、成体肺からのBALを採取した。これらからMSCsを単離し、先に単離したFL-MSCsとこれらの細胞群において回収の効率性や自己複製能、増殖能、分化能を比較することで、FL-MSCsの特性や有効性を検討する予定である。
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