研究実績の概要 |
これまで研究代表者は発展途上にある肺再生の分野において、胎仔肺組織移植を中心に基礎研究に取り組み、様々な知見を得てきた。今回、これらの知見を踏まえ、旺盛な増殖能と多能性を持つとされる胎仔肺由来の間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells:MSCs)が肺再生の細胞ソースとして適しているのではないかと考えた。その特徴や優位性を検証するために、胎仔肺由来のMSCsを抽出しその特性を評価すること、さらにヒトに近いブタにおける急性肺障害モデルに気道内投与し、肺再生の修復の過程にどのように寄与するかを検証し、肺の再生医療の一助となることを目的とした。 胎仔肺由来の間葉系幹細胞を抽出するために、54日齢のブタ胎仔肺組織を摘出し培養処理後にFicoll-Hypaque(GE Hearth care)で遠心分離し、単離した単核細胞を培養した。これらの細胞が間葉系幹細胞であることを証明するために、ポジティブマーカーとしての間葉系マーカー(D29, CD44, CD90, CD105)やネガティブマーカーとしての造血マーカー(CD34, CD45)を用いて、細胞の特性を評価する過程にあった。細胞の抽出と保存、また目的の細胞の評価の確立に時間を要し当初の計画より遅延したが、胎仔肺組織から間葉系幹細胞と考えられる細胞を抽出する手技を確立できた。さらに今後も引き続きその細胞の評価を行い胎仔肺由来のMSCsを確認することは、今後の肺再生の研究の一助になることが期待できると考える。
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