研究実績の概要 |
免疫療法,特に免疫チェックポイント阻害薬(以下ICI)の登場によって肺がん治療はパラダイムシフトとも言える大きな転換期を迎えた.しかしながらその恩恵を受けられるのは全患者の約20%程度と低く,その原因として同治療の効果予測のためのバイオマーカーが確立していないことが挙げられる.そこで我々は以前から解析してきた腫瘍組織内に浸潤したリンパ球(以下TIL)と患者腫瘍組織移植(以下PDX)モデルを組み合わせ, 患者由来の腫瘍細胞とTILからPDXモデルを確立することを目指している.本研究の目的は同モデル上でのICIによる腫瘍縮小効果を解析し, 個々の患者におけるICIの効果予測モデルを開発することである. 令和2年4月から令和3年3月までに計74例の肺癌患者の腫瘍組織と末梢血を採取した.MACSTM systemにて腫瘍組織は腫瘍細胞とTILに, 末梢血は末梢血単核球 (PBMC)にそれぞれ分離して液体窒素中に保存した.一部の検体はFACSでTILのサブセット解析 (CD3, CD4, CD8, PD-1, TIM3, LAG3等) を行った.さらに近年がん免疫療法の新規バイオマーカーとして報告が増えている三次リンパ様構造 (TLS)も切除検体の病理組織を用いて評価した.PDXモデルに関してはin vivoでのICI投与の前段階としてin vitroにおいて腫瘍細胞とTIL, ICIを共培養し, TILからのIFNγ産生能をELIspot assayで解析した.一方でMACSTM systemで分離した腫瘍組織をRMPI培地で培養したが, 腫瘍細胞が増殖しなかったため, 問題点を分析して再度試みる予定である. 今後は病理組織中のTILとTLSの解析をさらに進めつつ, PDXモデルに向けた問題点を一つずつ解決していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年4月から令和3年3月までに計74例の肺癌患者の腫瘍組織と末梢血を採取した.MACSTM systemにて腫瘍組織は腫瘍細胞とTILに, 末梢血は末梢血単核球 (PBMC)にそれぞれ分離して液体窒素中に保存した.一部の検体はFACSでTILのサブセット解析 (CD3, CD4, CD8, PD-1, TIM3, LAG3等) を行った.さらに近年がん免疫療法の新規バイオマーカーとして報告が増えている三次リンパ様構造 (TLS)も切除検体の病理組織を用いて評価した.本学において過去に非小細胞肺癌に対してがん免疫療法を受けた患者を解析した結果, 長期抗腫瘍効果を得ている患者はそれ以外の患者と比べて病理組織中のCD8陽性TILやTLSが有意に多かった. PDXモデルに関してはin vivoでのICI投与の前段階としてin vitroにおいて腫瘍細胞とTIL, ICIを共培養し, TILからのIFNγ産生能をELIspot assayで解析した.一方でMACSTM systemで分離した腫瘍組織をRMPI培地で培養したが, 腫瘍細胞が増殖しなかったため, 問題点を分析して再度試みる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は病理組織中のTILとTLSの解析をさらに進める計画である.具体的には免疫組織染色を用いてTILとTLS内リンパ球のサブセット解析を予定している.ELIspot assayについてはIFNγの発現量とTILのリンパ球サブセット解析やがん免疫療法を受けた患者の抗腫瘍効果との比較, 現行のがん免疫療法のバイオマーカーであるPD-L1発現との比較を行なっていく予定である.PDXモデルはについては上述した様にMACSTM systemで分離した腫瘍組織をRMPI培地で培養してみたが腫瘍細胞が増殖しなかったため, 問題点を分析して再度試みる予定である.
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