研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬 (以下ICI)の登場によって肺がん治療はパラダイムシフトとも言える大きな転換期を迎えた.しかしながらその恩恵を受けられるのは全患者の約20%程度と低く,その原因として同治療の効果予測のためのバイオマーカーが確立していないことが挙げられる.そこで我々は以前から解析してきた腫瘍組織内に浸潤したリンパ球(以下TIL)と患者腫瘍組織移植(以下PDX)モデルを組み合わせ, 患者由来の腫瘍細胞とTILからPDXモデルを確立することを目指している.本研究の目的は同モデル上でのICIによる腫瘍縮小効果を解析し, 個々の患者におけるICIの効果予測モデルを開発することである. 令和2年4月からの1年間で計115例の肺癌患者の腫瘍組織と末梢血を採取した.MACS systemにて腫瘍組織は腫瘍細胞とTILに, 末梢血は末梢血単核球 (PBMC)にそれぞれ分離した.PDXモデル開発の前段階としてin vitroにおいて分離した腫瘍細胞とTILを用いてICIと共培養し,IFNγ産生能をELIspot assayで解析した.その結果個々の患者によってICIへの反応が異なることが確認された.今後本結果と実際にICIを投与した患者での反応の比較を行う予定である. 一方で近年ICIの新規バイオマーカーとして報告が増えている三次リンパ様構造 (TLS)の解析も行っている.本学において過去に非小細胞肺癌に対してICIを投与された非小細胞肺癌患者 55例を解析した結果,長期抗腫瘍効果を得ている患者はそれ以外の患者と比べて病理組織中のCD8陽性TILやTLSが有意に多いことが明らかとなった.また非小細胞肺癌術後再発例におけるICI導入前後の再発後生存の変化を比較し, ICI導入後再発後生存が延長していることを示した.
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