前年度から引き続き胸腺腫と胸腺癌のオルガノイドについて樹立時の培養液の添加因子(ニッチ因子)の調整を行った。先行論文より、胸腺腫・胸腺癌の遺伝子変異の頻度を同定し、より増殖する可能性の高いニッチ因子を加えた。その結果、2例の胸腺癌と1例の胸腺異型カルチノイドのオルガノイドが臨床応用可能なレベルで顕著な増殖を示した。この3例について、生成されたオルガノイドが胸腺癌、胸腺カルチノイドであることを証明するためHE染色と免疫染色を行った。胸腺癌、胸腺カルチノイドいずれも元々の手術検体と同様の染色形態を示した。次世代シーケンサーを用いたオミクス解析(whole exome sequencing、RNA sequencing)も行った。現時点でRNA sequencingの結果のみ返却されているが、胸腺カルチノイドのオルガノイドはそれであることが証明された。また胸腺癌オルガノイドの2例に関してはwhole exome sequencing の結果を待っていることに加えてnude mouseの皮下と腎皮膜に移植し増殖を待っている段階である。胸腺癌オルガノイドの2例に関しては薬剤投与下での細胞増殖能を評価するMTSアッセイも行った。imatinibとorafenibで軽度ながら増殖抑制効果があることが認められた。また、胸腺癌オルガノイドの2例にnutlinを加えるといずれも増殖はみられず、この2例の胸腺癌に関してはp53の変異はないと考えられた。
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