研究課題/領域番号 |
20K17763
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
濱田 顕 近畿大学, 大学病院, 助教 (80772954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺癌 / ゲノム / 網羅的生体情報 / VUS / HER2 / HER4 / 分子標的治療 |
研究実績の概要 |
本年度は、LUX-Lung 8 試験(Soriaら、Lancet Oncol 2015)で同定された臨床的意義の不明なHER4変異(VUS:Variants of Unknown Significance)について検討を行った。LUX-Lung 8 試験は、ⅢB/Ⅳ期の肺扁平上皮がん患者を対象とし、EGFR-TKIであるアファチニブとエルロチニブの効果を比較検証した第Ⅲ相試験であり、その二次解析では(Gossら、JAMA Oncol 2018)、13種類のHER4遺伝子のVUS(R220I、G668V、V673F、T731M、D767V、I815N、E890Q、D931Y、V952F、I959T、E1011*、G1096I、I1226V)が報告されている。この13種類のHER4遺伝子をIL-3依存性細胞株である、マウスpro-B細胞株(Ba/F3細胞)に導入し、人工的な腫瘍細胞モデルを作成した。これらのHER4遺伝子変異の腫瘍原性を、IL-3除去下での増殖能を検証することで評価したが、13種類のHER4遺伝子変異すべてで、腫瘍原性がないことを確認した。また、昨年度の研究で、同じくLUX-Lung 8 試験の二次解析で報告されている10種類のHER2遺伝子のVUSについて、Ba/F3細胞株を用いたモデルを作成していた。本年度はこれらのBa/F3細胞株について、タンパクレベルでの評価を追加し、Western Blottingで、10種類のHER2変異すべてで、total HER2の発現が確認できたが、IL-3除去実験により腫瘍原性が示されたE395K変異、G815R変異、R929W変異のみでpHER2の発現を認めることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LUX-Lung 8 試験の二次解析で同定された、すべての臨床的意義が不明なHER2、HER4遺伝子変異について、その腫瘍原性を検討し、IL-3非依存的に増殖した細胞については、予定していたすべてのTKIについて、その感受性の評価を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
米国FDAにおいて、EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者を対象として特異的に設計された経口治療薬mobocertinib(TAK-788)が、同対象に対する分子標的薬として承認された。当院では過去に、EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がんモデルに対する、tarloxotinibとpoziotinibの二次耐性機序について解明し、報告している(Nishino, et al.Thoracic Cancer 2021)。先行研究で樹立済みのEGFRエクソン20挿入変異を伴うBa/F3細胞株(V769insASV、D770insSVD、H773insNPH、H773insH、A763insFQEA)を用いて、mobocertinib(TAK-788)の二次耐性機序について解明することを計画している。
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