研究実績の概要 |
LUX-Lung 8 試験(Soriaら、Lancet Oncol 2015)の二次解析(Gossら、JAMA Oncol 2018)で同定された、すべての臨床的意義が不明なHER2、HER4遺伝子変異について、IL-3依存性細胞株である、マウスpro-B細胞株(Ba/F3細胞)に導入し、人工的な腫瘍細胞モデルを作成し、それらを用いて腫瘍原性を検討した。その結果、HER2 E395K変異、G815R変異、R929W変異に腫瘍原性があることを確認し、これらの遺伝子変異に関しては、HER2阻害効果のあるTKIが有効であることを明らかにし、その結果をLung Cancer 誌に報告した。前年度からは、EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者を対象として特異的に設計された経口治療薬mobocertinib(TAK-788)の二次耐性機序を探索した。先行研究(Nishino, et al.Thoracic Cancer 2021)で樹立済みのEGFRエクソン20挿入変異を伴うBa/F3細胞株(V769insASV、D770insSVD、H773insNPH、H773insH、A763insFQEA)を用いて、点突然変異を高率に誘発するENU(N-ethyl-N-nitorosourea)に曝露させることで探索した。その結果、C797S、T790M二次耐性変異の発現頻度が高く、バリアントにより発現頻度が異なることに加え、F856Vという新規耐性変異を同定し、その腫瘍原性を確認し、これらの耐性機序を克服可能なTKIを探索した。
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