研究課題
2018年1月から2019年5月に、当院で外科的切除を施行した臨床病期IIA-IIIA期の原発性肺癌20例を対象としたパイロットスタディを行った。197遺伝子の変異を検出可能なCancer Personalized Profiling by deep Sequencing(CAPP-Seq)を用いて術前および術後のctDNAを解析した。検出された遺伝子異常のうちcosmicデータベースにて肺癌で報告されているものをctDNAと定義した。術前ctDNA陽性例は8例(40%)であり、陰性例と比較して、病理学的腫瘍径が有意に大きかった(p=0.02)。術後のctDNA陽性例は4例(20%)であり、陰性例と比較して、病理学的な低分化と有意に関連していた(p=0.03)。無再発生存の解析では、術後ctDNA陽性は陰性と比較して有意に予後不良であった(2年無再発生存率:25% vs 85%, p=0.015)。また術前ctDNA陽性例は陰性例と比較して予後不良な傾向にあった(2年無再発生存率:50% vs 85%, p=0.13)。また術前ctDNA陽性で術後陰性となった症例では5例中4例が無再発であったが、術前ctDNAが陽性で術後も陽性であった症例は3例中2例が再発した。このパイロットスタディより術後のctDNA検出が微小残存病変を反映すること、術後のctDNA解析は術後の再発予測に術前のctDNA解析よりも有用であることが示された。術後のctDNA解析は、再発しやすい集団を特定し、術後補助療法の適応を検討するのに役立つ可能性があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
パイロットスタディが完了し、論文として公表することが出来たため、概ね順調に進展していると考える。
前述のパイロットスタディを「Prognostic implications of preoperative versus postoperative circulating tumor DNA in surgically resected lung cancer patients: a pilot study」 としてまとめ2020年10月にTranslational Lung Cancer Research Vol. 9 No. 5 p. 1915-1923 に掲載された。しかし術後の経過観察中にctDNAが陽性化する症例も文献上報告されており、ctDNAによるフォローが現在実臨床で行われている画像検査のフォローより優れている可能性がある。再発をより早期に検出する手段としてのctDNA検査の意義を検証するためコホートを50例(この内14例再発)に拡大し、術後6か月ごとにctDNA検査を行う解析を実施中である。この50例の解析では、ctDNAが真に腫瘍由来であることを示すため、Natera社のctDNA解析を用いる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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