研究実績の概要 |
腫瘍残存病変を検出するためのcirculating tumor DNA(ctDNA)のモニタリングは、様々ながん種において再発予測や薬物療法の個別化などの面でその有用性が示されている。しかし、非小細胞肺がん(NSCLC)におけるその有効性については、十分なデータはない。本研究ではSignateraを用いて術後の予後予測やctDNAの状態と画像検査における再発の関係を評価した。 2018年3月から2020年6月までに近畿大学病院で治療を受けた臨床ステージII-IIIのNSCLC患者(N=46人)を対象とした。血漿サンプル(n=151)は、術前および術後早期、術後6カ月ごとに前向きに採取した。 年齢中央値は73歳(50-89歳)、男性は78%、喫煙者は78%、腺癌は57%であった。病理病期I期が26%、II期が39%、III期が35%で、59%の患者がpN0であった。ランドマーク解析(術後中央値9日、範囲2-53日)では5人の患者がctDNA陽性となり全例が再発し、ctDNA陽性は有意に予後不良であった(HR=5.3 94%CI: 1.8-15.3 p=0.002)。 さらに経過観察中に5人の患者がctDNA陽性となり全例が再発した。また経過観察中に1回でもctDNAが検出されると、有意に予後不良であった(HR 12.2, 95%CI 4.2-34.9, p<0.0001)。 全体として、ctDNA陽性の画像検査に対するリードタイム中央値は2.8(0-12.8)カ月であった。ctDNA陰性は予後良好な転帰と関連しており、長期の陰性適中率は83.3%(30/36人)であった。 術後の採血ポイントを術後早期だけでなく、6か月毎におこなうことで、術後の予後予測だけでなく、術後再発の早期発見にctDNA解析が有用であることが示された。
|