研究課題
近年、3次元培養研究の進歩から生検サンプルや切除臓器を活用したオルガノイド研究が進められてきている。オルガノイドは、解剖学的、機能的に生体内に存在する器官に近い特徴を示すことから、これまで困難であった生命現象の解析が可能になってきた。癌分野においても、各臓器癌に由来するオルガノイドが樹立され、細胞株や遺伝子改変マウスに代わる新しい癌モデルとして、個別化医療や新規治療法の開発に用いられてきている。この中で我々は、肺癌切除組織からのオルガノイドの樹立を行い、肺癌オルガノイドの作製に成功している。しかしその樹立率は自施設、他施設ともに高くなく、作製と培養法の改変を必要とする。肺癌オルガノイドの樹立過程で、正常肺由来オルガノイドがより早く増殖し、癌細胞に置き換わる現象が報告されており(Hynds, R. E. et al. Int J Cancer. 143, 160-166. doi: 110.1002/ijc.31383. Epub 32018 Apr 31386. 2018.)、樹立を阻む原因の一つと考えられている。これまでの検討において、野生型TP53遺伝子を持つ正常細胞増殖を抑制することができるMDM2阻害剤: nutlin-3aを培養液に添加することで、新たに肺腺癌オルガノイドを樹立することができている。さらに我々は研究期間2年目の成果として、培養液より複数のgrowth factorを抜くことで、正常肺オルガノイドの増殖を抑え、癌オルガノイドのみを選択的に増殖させることに成功した。これにより肺癌の約4割を占めるTP53野生型肺癌からのオルガノイド樹立が可能となる。
3: やや遅れている
特定の組織型を持つ肺癌の樹立に難渋している。
特に樹立困難である、扁平上皮癌からのオルガノイド樹立に注力するとともに、肺癌オルガノイドのライブラリ化をすすめる。
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NPJ Precis Oncol
巻: 5 ページ: 29
10.1038/s41698-021-00166-3.