近年の免疫チェックポイント阻害(ICB)療法の成功により、腫瘍免疫の賦活化で、肺がんを治療できることが示された。しかし、i) 不応答症例の方がむしろ多いこと、ii) 耐性獲得がんの出現、などの大きな問題がある。本課題では、1) W効果による免疫寛容誘導メカニズムを解明するとともに、2) W効果ターゲット免疫療法の有効性をマウス前臨床モデルにて検証することを目的として、各種取り組みを行った。 【1. メカニズムの解明】前年度までの検討で、W効果がもたらす免疫寛容に強く関与するシグナル伝達経路を同定していた。この経路のシグナル異常メカニズムを明らかにするための各種解析を行った。シグナル経路を駆動する受容体に対する中和抗体を用いた検討等から、W効果様の代謝に、当該シグナル経路のオートクライン/パラクラインループを抑制する作用があることが分かった。 【2. マウスモデルにおける治療効果の検証】 遺伝子操作によるW効果への拮抗が、既存チェックポイント阻害と相乗効果を示すか否か、種々のsyngenic移植腫瘍系を用いて検討した。多くの場合、PD-1阻害よりもPD-L1阻害の方が、腫瘍抑制効果が大きかった。この現象が、マウス固有のものなのか、使用する抗体の性能の問題によるものなのかは判然としていない。ともかく、全てではないが複数細胞株において、W効果解消に似た代謝改変が、2a) 移植腫瘍の増大を遅らせること、2b) 免疫チェックポイント阻害に対する感受性を高めること、が分かった。
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