研究課題/領域番号 |
20K17773
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齊藤 和智 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60770740)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オキシトシン / 疼痛制御 / Hargreaves試験 / von-Frey試験 |
研究実績の概要 |
下垂体後葉ホルモンの一つであるオキシトシン(Oxytocin: OXT)は、主に、視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉より血中に分泌される。近年ではOXTが抗不安・抗ストレスなどの情動反応に影響すると共に、疼痛制御機構にも関与することが示唆されている。本研究では脳内のOXT受容体に焦点を当て、上位中枢において情動、侵害刺激、そして非侵害刺激に対してOXTが及ぼす影響を野生型および各種ノックアウトマウスを用いて検証する。 本年度は、6週齢の野生型マウスWT、オキシトシンノックアウトマウスOxt-/-、受容体ノックアウトマウスOxtr-/-、そして受容体ノックアウト部位に蛍光タンパクVenusをノックインしたマウスOxtrVenus/+を用いて、実験を行なった。行動試験としてOpen field試験、Light/Dark試験、Hargreaves試験、von-Frey試験を行い、情動反応、侵害刺激および非侵害刺激に対する反応へのOXTの影響を観察した。Open field試験やLight/Dark試験では各群で有意差を認めなかったが、侵害刺激に対する反応の評価方法であるHargreaves試験および非侵害刺激に対する反応の評価方法であるvon-Frey試験においてはWTとOxt-/-・Oxtr-/-間に有意差を認めた。OXTが上位中枢においても疼痛制御機構に関与していることが明らかとなったが、OXTの情動反応に対する作用は本研究からは否定的と考えられた。来年度以降は、有意差を認めたHargreaves試験とvon-Frey試験後の脳切片標本に対して、免疫組織学的評価を施行し、OXTが炎症細胞に直接作用するのか各種マウスを用いて比較検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オキシトシンが上位中枢において、情動や侵害刺激、そして非侵害刺激に与える影響を調べるために、各種ノックアウトマウスを使用して実験を行なった。使用したマウスは、6週齢の野生型マウスWT、オキシトシンノックアウトマウスOxt-/-、受容体ノックアウトマウスOxtr-/-、そして受容体ノックアウト部位に蛍光タンパクVenusをノックインしたマウスOxtrVenus/+である。これらを用いて、Open field試験、Light/Dark試験、Hargreaves試験、von-Frey試験を行った。侵害刺激に対する反応の評価方法であるHargreaves試験および非侵害刺激に対する反応の評価方法であるvon-Frey試験において、有意差を認めたことから、オキシトシンが上位中枢で疼痛制御機構に関与していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
マウスを用いた行動実験において、有意差を認めたHargreaves試験とvon-Frey試験後の脳切片標本に対して、免疫組織学的評価を施行する予定である。OxtrVenus/+の脳切片標本の観察には、神経活性化マーカーc-fosに対する抗体を用いる。Hargreaves試験後では、中脳水道灰白質(periaqueductal gray matter, PAG)・扁桃体内側核(medial amygdala, MeA)・側坐核(nucleus accumbens, NAcc)において、OXT受容体に共局在を検討する。ついで、抗c-fos抗体と抗OXT抗体を用いて,WTとOxtr-/-で免疫染色を施行する。さらにWTに対して,GABAおよびOXTに対する抗体を用いて免疫染色を施行する予定である。 野生型およびノックアウトマウスと痛みモデルを用いて、von-Frey testやHargreaves testなどを用いた行動実験、上位中枢のc-fos(神経活性化因子)やOXT関連の免疫組織学的検討、電気生理学的な脳機能研究を行い、最終的にはOXT関連鎮痛および抗ストレス薬の検索と効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験動物は、昨年より飼育を行っていたものもある程度使用したため、本実験動物の購入費用は当初予定額より少なく済んだ。また、実験の途中であることから、論文作成を行う段階にはなく、論文作成における英文校正などにかかる費用は計上されなかったため。次年度は、実験動物の購入や英文校正にあてる予定である。
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