本研究ではADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder、注意欠陥多動性障害)モデルラットの一つであるSHR(Spontaneously Hypertensive Rat)において、内因性鎮痛機構、特にNA(ノルアドレナリン)神経系が変化している可能性に着目し、研究を計画した。痛みにはさまざまな種類があるが、本研究では特に神経障害性疼痛に着目して、研究を進めた。神経障害性疼痛モデルであるSNL(Spinal Nerve Ligation)ラットを、SHRとwild typeのラットとを用いて作成した。Von Frey Filamentを用いた疼痛回避閾値の実験で、SNL前とSNL後2週間でSHRとwild typeを比較したところ、通常は差がみられなかったが、神経障害性疼痛の治療薬であるプレガバリンに対する反応性について、SHRでは疼痛回避閾値の回復効果がみられなかった。この行動実験の結果は、中枢神経系のNA神経系の差によるものと考え、追加実験としてそれぞれのラットの脊髄・脳の青斑核・脳の前頭前野の免疫染色や、microdialysisによる脳内神経物質濃度の測定、電気信号の測定を行った。結果、SHRの脊髄ではNAの濃度が上昇していることや、SHRの脳の青斑核は疼痛に対する反応性が乏しいことが示唆された。また、他の共同研究者との研究で、SHRでは急性期痛に対する回復が遅延することも示唆された。これらの研究成果の一部は、他の共同研究者とともに、論文として発表した。
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