研究課題/領域番号 |
20K17783
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神崎 理英子 広島大学, 病院(医), 助教 (70751402)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性高熱症 / 遺伝子スクリーニング |
研究実績の概要 |
悪性高熱症が疑われる患者や家族に、同意を得て、筋生検・Ca induced Ca release test (CICRテスト)を施行した。悪性高熱症の素因の有無を調べるCICRテストが正常ではない7人の患者について、悪性高熱症の遺伝的な素因があると考えられるため、次世代シーケンサーを用いて遺伝子スクリーニングを行った。血液からQIAamp DNA Blood Maxiを使用してDNAを抽出し、次世代シーケンサー(Ion PGM)を使用してRYR1とCACNA1Sについて遺伝子スクリーニングを行い、遺伝子変異を検出した。遺伝子スクリーニングの結果、検出した遺伝子変異について、EMHG(European Malignant Hyperthermia Group)に認められている既知の原因遺伝子と一致しているものは、その症例の悪性高熱症の原因遺伝子と考えられるが、検出したその他の変異については複数のプログラムを使用して病原性の評価を行った。病原性が高く、RYR1もしくはCACNA1Sに存在する新規の原因遺伝子の可能性があるものについてSanger法で実際の遺伝子変異の有無を確認した。 その結果、数種類のEMHGに認められたRYR1の既知の変異と、存在頻度が低く(MAF<0.1%)複数の病原性を評価するプログラム(CADD、SIFT、MutationTasterなど)でも病原性が高そうであると評価された新規の原因遺伝子の可能性がある数種類のRYR1の変異を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
悪性高熱症はとても稀な麻酔合併症であるのと、筋生検が血液検査と比べると侵襲が大きく筋生検での検査まで希望されない症例もあり、参加者があまり集まらなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、悪性高熱症を発症した患者や家族で悪性高熱症の素因検査であるCICRテスト陽性であった症例について、RYR1とCACNA1Sについて遺伝子スクリーニングを行っていく。 スクリーニングで検出したRYR1やCACNA1Sの新規の変異の可能性のある変異については、今後、機能解析を行い、実際の病原性の有無の確定を行う。 悪性高熱症の症状が強く出ていてRYR1やCACNA1Sに原因遺伝子を認めない症例があれば、RYR1やCACNA1Sとは別の未知の原因遺伝子が存在する可能性が高いため、exome sequenceに提出し、RYR1やCACNA1S以外の全く新しい悪性高熱症の原因遺伝子について探索を行う。CICRテスト陽性で悪性高熱症の素因があると考えられる患者でも約半数ではRYR1やCACNA1Sに原因となりそうな変異を認めない症例がある。今後、悪性高熱症の原因遺伝子の研究が進めば、多数の悪性高熱症の原因遺伝子が明らかになっていくと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行により、学会発表等での旅費の使用が予定より少なかったため。 翌年度分と合わせて、引き続き試薬や必要物品の費用などにあてる予定としている。
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