研究課題/領域番号 |
20K17786
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
茶木 友浩 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30758701)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 麻酔薬神経毒性 / 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
腸内細菌叢移植による幼若脳麻酔薬神経毒性への影響を明らかにするため、セボフルラン曝露のみを行う(Sevo)群、セボフルラン曝露+腸内細菌叢移植を行う(Sevo+FMT)群にラットを割り付けた。生後28日から施行したモーリス水迷路試験およびY字迷路試験の結果、Sevo+FMT群では空間学習能力が改善する結果を認め、腸内細菌叢移植によって幼若脳麻酔薬神経毒性が軽減される可能性が示唆された。さらに、腸内細菌叢移植による実際の腸内細菌叢の変化を検証するため、生後21日のラットから糞便を採取し、16sリボソーマルRNA解析による腸内細菌叢解析を実施した。その結果、Sevo+FMT群では、Chao1 index及びSimpson indexが有意に高く、さらに門レベルでの解析では、Firmicutes門及びLentisphaerae門の細菌が増加する一方、Bacteroides門及びProteobacteria門の細菌が減少することが明らかとなった。Firmicutes門には、脳内でBDNF産生を促進する短鎖脂肪酸を産生する菌株が多く属していることが知られており、Firmicutes門の細菌増加が行動学的な学習能力改善効果をもたらしたと考えられる。今後は、短鎖脂肪酸の評価および、海馬におけるBDNF産生量、ヒストンアセチル化定量などを行い、腸内細菌叢移植が学習能力改善をもたらした機序について明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス蔓延により、当大学内での動物購入が不可能となった期間があった。さらに、大学施設の改修工事のため、数ヶ月に渡って動物実験が行えない期間もあり、当初の予定からはやや遅れた進捗状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、腸内細菌叢移植によって幼若脳麻酔薬神経毒性が改善した機序を明らかにするため、短鎖脂肪酸解析、BDNF定量評価、ヒストンアセチル化定量評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症蔓延の影響と、大学施設改修の影響によって、動物を用いた実験ができない期間が5ヶ月ほどあったため、予定より実験遂行に遅れが生じ、使用する金額も減額した。翌年度分と合わせて、機序に関する実験を進めるために必要な薬品、実験器具を購入する予定である。
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