SH-SY5Y細胞に各種濃度のブピバカインを24時間投与したところ、細胞の生存率が濃度依存的に抑制された。さらに、1mMのブピバカインは時間依存的にSH-SY5Y細胞の生存も抑制した。Tetrodotoxin、tetraethylammonium、nifedipine(L型Ca2+チャネル阻害薬)、ω-conotoxin、 SNX-482、ω-agatoxinの単独投与はSH-SY5Y細胞の生存率に影響を示さなかった。同様に、これらのイオンチャネル阻害薬はブピバカイン(1mM)によって誘導された神経細胞死にも影響を及ばなかった。NifedipineはSH-SY5Y細胞の生存やブピバカインの神経細胞毒性作用を影響しなかったことに対して、T型およびL型Ca2+チャネル阻害薬であるmibefradilは濃度依存的にSH-SY5Yの細胞死を誘導したと同時に、ブピバカインによって誘導された神経毒性作用も増強させた。さらに、最近に報告された特異性の高いT型Ca2+チャネル阻害薬であるNNC55-0396を用いてもmibefradil と同様な実験結果が得られた。これらの結果からはSH-SY5Y細胞においてT型Ca2+チャネルはSH-SY5Y細胞の生存に重要な役割を果たし、ブピバカインはT-typeカルシウムチャネルの阻害を介して、神経毒性をもたらす可能性が示唆された。T型Ca2+チャネルはCav3.1、Cav3.2及びCav3.3の3つのサブタイプが存在するが、これからはどのサブタイプがSH-SY5Y細胞の生存及びブピバカインによる誘導された細胞毒性作用に関わっているかを同定する予定である。
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