研究課題/領域番号 |
20K17798
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
長峯 達成 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (20867436)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カプサイシン処置 / IVIS / ルシファラーゼ / DWB |
研究実績の概要 |
1.方法 BALB/c妊娠マウスから出生した雄の新生仔マウスの生後0日目と2日目にカプサイシン5mg/kgを皮下投与し、C線維を破壊したマウスを作製した。C線維の破壊は生後4週目に行ったワイピングテストによって証明された。5-6週齢時となったカプサイシン処置マウスの右脛骨骨髄腔内に、ルシファラーゼ酵素を発現する乳がん細胞株1万個を注入し、骨がんモデルを作製した。カプサイシン処置マウスにおいてがん性疼痛が抑制されるかどうかについて、動的体重負荷測定装置(DWB)を用いて左右の肢にかかる重量と接地面積の左右比の行動学的評価を行った。がんの進展の評価は、マウスにD-Luciferinを150mg/kg腹腔内投与した10分後に発光イメージングシステムIVISで撮影し、光源の光度であるTotal Flux(photons/sec)によって腫瘍の増殖を定量化した。動物愛護の観点から、急激な体重減少(数日間で20%以上)や明らかな衰弱が認められた場合に安楽死させて生存曲線を作成した。 2.結果 カプサイシン処置を行った群と無処置の群にそれぞれがん細胞を移植し、疼痛閾値の変化をDWBで測定したところ2群間に有意差は認められなかった(各群n=8)。がん性疼痛モデルマウスを発光イメージングシステムIVISにより経日的に撮影したところ、腫瘍増殖の程度や転移が視覚的に観察出来た。カプサイシン群と非カプサイシン群を比較して腫瘍の増殖の進展に差があるかを調べるために、各々のマウスで光源の光度であるTotal Flux値を測定し、腫瘍の増殖の程度を定量化した。カプサイシン処置群で腫瘍の増殖は抑えられる傾向にあったが、両群間に統計学的な有意差は認めなかった。カプサイシン群(n=9)と非カプサイシン群(n=8)でカプランマイヤー生存曲線を作成したが、生存率に有意差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験でカプサイシン処置によりC線維を破壊したがん性疼痛モデルマウスの生存率が延長することを確認していたが、本研究では再現性を得るに至らなかった。これに関して、マウスの匹数や週数齢の違い、もしくは細胞培養の仕方や腫瘍注入時の手技上の問題が課題として挙げられ現在検討中である。 また、今回IVISによる経日的なTotal Flux値の測定においてカプサイシン群と非カプサイシン群では有意差がなかったが、各個体でのTotal Flux値のばらつきが大きく、標準誤差の値が大きい信頼性の低いデータとなった。今後、各個体でのTotal Flux値のばらつきをなくす方法について検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
各個体でのTotal Flux値のばらつきが是正されれば、両群での平均Total Flux値の有意差や生存率においても結果が異なる可能性がある。今後、各個体でのTotal Flux値のばらつきをなくす方法について検討していく予定がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
「研究計画が予定通り進展しない場合」にはカプサイシン処置マウスの代わりにTrkA受容体ノックアウトマウスを用いる予定であったため、TrkA受容体ノックアウトマウスを購入した後に本研究室で繁殖させていたが、全てのホモ型TrkA受容体ノックアウトマウスは胎児期または出生直後に死亡し、本研究に応用することが出来ず、研究にやや遅れが生じたため、期間延長を行い、研究費を次年度に使用することとした。今後、ホモ型の生存条件を検討していく必要がある。 カプサイシン処置および非処置マウスでの腫瘍の進展の差が明らかとなれば、行動と進展の評価後に分子生物学的解析を行う。この分子生物学的解析に次年度使用額を使用する予定である。分子生物学的解析は、安楽死させた処置側脛骨と脊髄(L3-5部分)を摘出し、そこからRNAを抽出して免疫染色およびリアルタイムPCR法を用いて、各種染色を用いた疼痛関連分子を評価する。
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