研究課題/領域番号 |
20K17799
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
北浦 淳寛 近畿大学, 医学部, 医学部講師 (20716485)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖化最終産物 / 糖尿病 / 免疫 |
研究実績の概要 |
糖尿病における免疫機能変化について、糖化最終産物(Advanced Glycation end-products; AGEs)とマクロファージの機能に着目した研究を現在研究調書に記載した計画に基づき遂行中である。本年度までに、研究計画書の1)マクロファージによるLPS取り込み、2)AGEsの作用メカニズムおよび、3)LPS取り込みによる細胞死の機序については予定通り研究が進行した。1)については、マウス単球由来のセルラインである(RAW264.7)を用いたin vitro の研究で、マクロファージはCD14を介してLPSをエンドサイトーシスにより取り込むことを確認した。そして、CD14以外の主要なLPSやAGEsに関与すると報告のある受容体(TLR ファミリー、スカベンジャー受容体、RAGE等)についても検討を行い、それらがマクロファージのLPS取り込みに影響を与えていないことも確認した。さらに、LPSを取り込んだマクロファージはCXCL10等のインターフェロンを産生し、免疫細胞の誘導に関与することが確認された。2)に関しては、AGEsの中で特に生理活性が高く糖尿病の病因の1つとして考えられているグリコールアルデヒド由来のAGEであるAGE3を用いた研究を行った。この研究により、AGE3はマクロファージによるLPS取り込みを抑制することが発見された。AGE3のLPS取り込み抑制のメカニズムは未だ完全には確認できていないが、種々の検討によりRAGEが関与してい ることは明らかとなった。これまでの成果は学術論文としてPLOS ONEに掲載された。現在、モデルマウスを用いた実験系の確立に取り組んでいる。また、in vitro実験の副産物として、AGE3が内皮細胞の血管新生を促進する可能性があることが明らかになった。そのため、こちらについてもヒト内皮細胞を用いたin vitroでの新たに実験系を構築し、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点でin vitro での検討がほぼ終了し、これまでの成果は論文として公表した。マウスを用いた研究の確立に取り掛かっており、その条件設定に時間を要しているが、当初より想定された進捗状況の範囲内である。また、in vitroの実験系で新たな実験系を構築でき、発展性が見込まれる状態である。
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今後の研究の推進方策 |
現行通り、研究は遂行する予定である。 研究遂行における課題は、COVID-19による影響が挙げられる。研究代表者は集中治療領域を専門とする臨床医であり、場合によりCOVID-19対応に動員されるリスクがある。また、COVID-19による物資供給網の崩壊が生じた場合、必要な試薬等の輸入に時間を要する可能性がある。現に、昨年度はこの問題に苦慮した。これらの影響に対して、より早期より計画的な材料確保と、効率的な計画を心掛け、極力影響を最小限にする努力を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroの研究に用いる予定であった抗体等の高額薬剤が、研究が順調にいった結果、節約できたこと、in-vivo研究開始時に大量に必要であったAGE3などの薬剤を、研究室内で自作可能となったことから、当初薬品購入に必要であった経費が削減できた。
COVID19の影響で海外学会への渡航が不可能であったため、海外学会への参加を次年度に延期した。
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