研究課題/領域番号 |
20K17805
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
太田 浄 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30761100)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ノルアドレナリン作動性神経系 / 薬理遺伝学 / 内側前頭前野皮質 / 脊髄後角 |
研究実績の概要 |
慢性的に痛みが持続している状態では、ノルアドレナリン作動性神経系の内側前頭前野皮質に対する投射において痛み修飾能に変化が起きている可能性がある。薬理遺伝学によって逆行性アデノ随伴ウィルスベクター(AAV2-retro)を用いると、青斑核から特定の神経領域に投射する経路に人為的な神経活動制御システム(DREADD)を構築することが可能である。遺伝子改ラットDβH-Creのノルアドレナリン作動性神経系において、ノルアドレナリン作動性神経系の上行性投射(青斑核―大脳内側前頭前野)および下行性投射(青斑核ー脊髄後角)に対するDREADDシステムを導入した。さらに2週間待機したのち、神経障害性疼痛モデル(spinal nerve ligation)を作製して、人為的な興奮制御に基づいた痛み行動解析をvon Frey filamentを用いた行動実験で行った。その結果、青斑核から内側前頭前野皮質に投射する経路では、生理学的条件から神経障害作製後の早期では鎮痛に作用するが、慢性期の6週間以降では次第に痛み促進系に変化していくことが明らかになった。神経障害性疼痛ラットの慢性期では新たな痛み刺激に対する青斑核の興奮応答が減弱化しているが、青斑核ー脊髄後角に投射する経路は人為的に興奮させることが出来れば、鎮痛作用が出ることがわかった。実終了後、免疫組織染色法を用いて、青斑核の神経細胞にDREADDと共に発現した蛍光タンパクmCherryを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19パンデミックによる研究活動が制限されたことによって、多少なりとも実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
青斑核ー内側前頭前野皮質の経路とノルアドレナリン再取り込み阻害作用のあるDuloxetineによる鎮痛作用との関連性について、下行性疼痛抑制系ループによる影響を検討するための薬理学的拮抗試験、さらに免疫組織染色法および電気生理検査などによる形態および機能的な機序解明を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19パンデミックによる研究活動の制限によって使用額が減った。本年度の研究結果を踏まえて、次年度は光遺伝学セットを併用して追加実験を行っていく予定である。
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