労作性熱中症(EHS)や運動誘発性横紋筋融解症といった熱/労作不耐と悪性高熱症(MH)は,原因となるトリガーは異なるが臨床症状は酷似しており,その相関は以前より示唆されている.実際,EHS患者からもMHの原因遺伝子であるリアノジン受容体(RYR1)遺伝子変異が見つかっており,RYR1遺伝子変異はEHSの遺伝的要因の1つと考えられている.さらに,RYR1遺伝子変異をもつ患者の一部は,極端な高温環境条件や身体活動がなかったにも関わらずEHSを発症したという報告もあり,RYR1遺伝子変異が熱/労作不耐に起因している可能性は高い.本研究の目的は,EHSや運動誘発性横紋筋融解症患者の発症予防を目指し,熱/労作性不耐の原因を既知の悪性高熱症 RYR1遺伝子変異,特にどの遺伝子変異と関連させることが可能かを明らかにすることである.具体的には,EHSおよび運動誘発性横紋筋融解症を発症した患者から採取した検体を用いて遺伝子解析を行い,検出されたRYR1遺伝子変異に関して機能解析を行うことで,RYR1遺伝子変異と熱/労作不耐の関連性を探求する. 広島大学遺伝子倫理委員会の承認を得たあと,広島大学病院を受診したEHSおよび運動誘発性横紋筋融解症疑いの患者からの血液採取を開始した.本研究への協力(血液採取)にあたり,本研究の目的,意義,提供をうけた血液の使用に関して明記した説明文書を用いて説明し,書面で本研究への協力を得た. 2021年度は新型コロナウイルス蔓延の影響で野外活動などが制限されたことにより,熱中症患者の数が全国的にも極めて少なかった.本院に来院した熱中症患者も極めて少なく,研究対象に該当する熱中症患者の来院はなかった.本院に来院する熱中症患者のみを対象とするとサンプル数に限度があるため,今後は関連病院の協力なども検討中である.
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