本研究の目的は、神経障害性疼痛の慢性期において急性期に認められる脊髄後角のミクログリア集積とカルシウムチャネルα2δサブユニットの発現増加がどのように変化し、その変化が神経障害性疼痛治療薬の鎮痛効果にもたらす影響を解明することである。本研究ではC57BL6マウスを用いて、慢性神経障害性疼痛モデルであるSpared Nerve Injury(SNI)モデルを作成した。血液脳関門透過性HO阻害薬SnPPの腹腔内投与によって、α2δリガンド(プレガバリン・ガバペンチン)の鎮痛効果は消失した。一方で、血液脳関門非透過性HO阻害薬ZnPPの足底投与では、α2δリガンド(プレガバリン・ガバペンチン)の鎮痛効果に変化はなかった。血液脳関門透過性HO阻害薬SnPPの髄腔内投与によって、α2δリガンド(プレガバリン・ガバペンチン)の鎮痛効果は消失した。また、血液脳関門非透過性HO阻害薬ZnPPの髄腔内投与によっても、α2δリガンド(プレガバリン・ガバペンチン)の鎮痛効果は消失した。プレガバリンは脊髄後角でHO-1・M2ミクログリアマーカー・内因性オピオイドの遺伝子発現を増加させ、ミクログリアマーカー・アストロサイトマーカー・炎症性サイトカインの発現を減少させた。その変化は血液脳関門透過性HO阻害薬SnPP (100 nmol/kg)の髄腔内投与で消失した。ガバペンチンも同様に脊髄後角でHO-1・M2ミクログリアマーカー・内因性オピオイドの遺伝子発現を増加させ、M1ミクログリアマーカー・アストロサイトマーカーの発現を減少させた。その変化は血液脳関門透過性HO阻害薬SnPP (100 nmol/kg)の髄腔内投与で消失した。 以上、神経障害性疼痛治療薬α2δリガンドの鎮痛効果に脊髄のHO-1が重要であることが判明した。
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