研究課題/領域番号 |
20K17821
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
加藤 純悟 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40465018)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経成長因子 / 先天性無痛無汗症 / 慢性疼痛 / p75 / 鎮痛薬 |
研究実績の概要 |
本研究では、神経成長因子(nerve growth factor: NGF)に骨・関節での特異的な無痛症を特徴とする遺伝性疾患である先天性無痛無汗症V型(HSAN-V)をもとに、痛覚過敏に特異的なNGFシグナリングを同定し、新規鎮痛薬の開発につなげることを目的とする。 本研究の初年度にあたる本年では、まずは計画通りPC12細胞を用いたin vitroでのNGFシグナリングのアッセイ系の確立を行った。予定通りNGFの投与により、PC12細胞は形態的に神経突起の成長を見せるとともに、western blotによる細胞内シグナリングでもNGF受容体でありTrkA, p75両方の下流シグナリングの活性化を確認することができた。 当初の予定では、痛みに特異的なNGFシグナリングを同定するために、HSAN-V患者で見られるNGF変異を模倣したノックインマウス(R100E NGFマウス)の唾液腺から得られる無痛型NGFを活用することを計画していた。しかしながら、無痛型NGFの単離を依頼している共同研究先であるCamilla Svennsonラボ(Karolinska Institutet, スウェーデン)でのR100E NGFマウスの飼育上のトラブルにより、無痛型NGFの精製に遅れが出ているため、無痛型NGFの使用は現時点で断念せざるを得なくなった。打開策として、市販の抗NGF抗体のうち、無痛型NGFと同様に2つあるNGF受容体のうちp75との結合が阻害されるモノクローナル抗体であるNGF30の使用に活路を見出した。NGF30存在下ではp75の下流シグナルであるJNKのリン酸化が著明に抑制されることを再現することができた。今後は、このモノクローナル抗体NGF30を基盤として、マウス病的疼痛モデルを用いたin vivo系に発展させていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、痛みに特異的なNGFシグナリングを同定するために、HSAN-V患者で見られるNGF変異を模倣したノックインマウス(R100E NGFマウス)の唾液腺から得られる無痛型NGFを活用することを計画していた。しかしながら、無痛型NGFの単離を依頼している共同研究先であるCamilla Svennsonラボ(Karolinska Institutet, スウェーデン)でのR100E NGFマウスの飼育上のトラブルにより、無痛型NGFの精製に遅れが出ているため、無痛型NGFの使用は現時点で断念せざるを得なくなった。打開策として、市販の抗NGF抗体のうち、無痛型NGFと同様に2つあるNGF受容体のうちp75との結合が阻害されるモノクローナル抗体であるNGF30の使用に活路を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はモノクローナル抗体NGF30を基盤に、引き続きPC12細胞を用いたin vitro系でNGF30の薬理作用を詳細に解析していき、濃度依存性やNGF受容体であるTrkA, p75それぞれの下流シグナルに対する影響を明らかにする。 NGF30はラット由来のIgGであることから、これを当研究室のマウスを対象に確立してきた疼痛関連の行動解析系に応用するには、NGF30をマウスに投与できる形に変える必要がある。そこで、IgGをFabフラグメント 化し精製することを試みる。精製成功後に、種々のマウス病的疼痛モデルにてNGF30の鎮痛効果を探索する予定である。
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