研究実績の概要 |
手術中脳波変化と術後痛の関連を後方視的に調べた。手術中脳波変化として手術開始時と終了時の脳波各周波数帯域のパワー及びバイコヒーランス値の変化量に加え、Phase amplitude coupling(PAC)解析値(Modulation index, MI)を調べた。MIはδ波の位相とα律動の振幅間のPAC解析により調べた。予定開腹手術を受けた40名の患者を対象とし、前額部脳波を解析した。術後痛は、術後1日目の痛みの程度を Numerical Rating Scale(NRS)を用いて評価したところ、9名にNRS 4以上の中等度の術後痛を認めた(術後痛あり群)。術後痛あり群と術後痛なし群で各周波数帯域の脳波スペクトル解析値の変化に有意差はなかった。(α帯域 0.16 ± 1.74 vs -0.45 ± 2.41 dB, P = 0.426; θ帯域 -0.01 ± 0.92 vs 0.60 ± 2.47 dB, P = 0.302; δ帯域 -0.68 ± 1.42 vs -0.01 ± 2.61 dB, P = 0.348)。また、バイコヒーランス解析値の変化量も同様に有意差はなかった。(α帯域 -0.65 ± 9.23 vs -1.11 ± 12.9%, P = 0.910; θ帯域 -0.67 ± 4.29 vs 1.22 ± 4.32%, P = 0.745; δ帯域 -3.52 ± 8.18 vs 1.66 ± 9.30%, P = 0.136)。一方、術後痛あり群はなし群に比べて、MI比が低い傾向にあることが判明した。(1.03±0.98 vs 2.14±2.74, P = 0.092)。現時点では、術後痛と関連のある脳波変化を同定できていない。しかし、本研究の結果は脳波PAC解析値と術後痛との関連に関し、更なる研究が必要であることを示している。
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