研究課題/領域番号 |
20K17839
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西本 れい 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (60789585)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミクログリア / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、低体温療法の脳保護作用の分子基盤を明らかにするため、中枢神経系のグリア細胞であるミクログリアに着目し、ミクログリアが温度感受性TRPチャネルを介して温度を感じて細胞機能(遊走)を変化させること、及びそのメカニズムを明らかにすることである。令和元年度までに、2光子励起顕微鏡を用いたin vivo imagingにより、ミクログリアの突起の運動には温度依存性があり、TRPV4遺伝子欠損マウスでは消失していることを見出した。令和2年度は、in vivo imagingで炎症状態を模倣したリポ多糖投与実験を行い、その傾向は変わらなかった。TRPV4の活性化がミクログリアの動きを制御する仮説について、in vitro imagingを追加で行い、TRPV4活性化剤は37度条件においてミクログリアの動きをより活性化させる結果が得られた。以上から、マウスミクログリアは、TRPV4によって温度変化を感じて運動能を変化させていることが強く示唆された。また、TRPM4遺伝子欠損マウスについては、新型コロナ肺炎国内感染状況により継続的な実験が困難となり、解析は遅れている。これまでに得られたマウスミクログリアの動きの温度依存性にTRPV4が関与する結果についてまとめ、論文として投稿し、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaに掲載された。今後、所属施設の研究活動レベルを遵守する中で、TRPM4遺伝子欠損マウスを用いたミクログリア運動制御の解析実験、および病態生理モデル作成を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ肺炎国内感染状況により、研究協力施設への訪問が難しくなったことから計画を見直した。そのため、実験の推進が滞った。また、所属施設での実験について、所属研究施設内での活動制限により、計画の中断が余儀なくされたため、初年度の研究計画は遅れることとなった。しかしながら、すでに得られた結果を論文として投稿し採択されたことから、研究目的の一部を達成できたため、若干の遅れはあるものの最終目標へ進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ肺炎の国内感染状況を鑑み、県外の研究協力施設で計画していた実験は次年度に変更し、所属施設での実験を先に行う方針とした。TRPM4遺伝子欠損マウス用いた行動実験、蘇生後脳症モデル作成、in vitroイメージングを計画し、TRPM4がミクログリアの温度依存性に関与するのか否か、明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ肺炎国内感染状況により、実験計画の変更および実験の一時的中断があったことに加え、初年度に予定した県外研究協力施設での電気生理学的実験(パッチクランプ、カルシウムイメージング)およびin vivoイメージング実験を行わなかったことが理由としてあげられる。令和3年度は、所属施設で遂行可能な実験を行なっていく予定である。
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