フレイルモデルとして妥当とされる26週齢の老化促進モデルマウス(SAMP10)に、水または5%ラフィノース水を4週間摂取させた後に、それぞれ腹部手術を施行し、手術6時間後に術後せん妄の多角的な評価と腸内細菌叢の解析を行った。評価は、海馬内の炎症性サイトカインをqRT-PCRで、血清中の炎症性サイトカインやストレスホルモン、セロトニンをELISAで、せん妄を行動学的解析で、腸内細菌叢を次世代シーケンサーによるメタゲノム解析で行った。 ラフィノース投与によって、海馬内炎症性サイトカインおよびBDNFに有意差はなかったが、血清中のIL-6、コルチコステロンは有意に低下した。また、手術群で血清中セロトニン濃度は有意に低下したが、ラフィノース投与群では正常だった。行動学的解析では、ラフィノース投与群で有意にせん妄様行動が改善した。腸内細菌叢のメタゲノム解析では、ラフィノース投与群で手術群に比べ多様性が改善し、セロトニン産生菌の増加があった。 ラフィノース投与によって腸内細菌叢の多様性が増加し、それに伴ってセロトニン産生が亢進した。本結果より術後の超急性期には、ラフィノース投与が神経炎症とは別の機序にも作用し、術後せん妄を改善する可能性が示唆された。
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