初年度は予備実験として,ミトコンドリアDNAに異常のない正常iPS細胞(HPS0223,理化学研究所)を入手し,培養を開始した.現在までに,iPS細胞の培養の維持,凍結保存が自在に制御できるようになった.次年度は大脳皮質由来の神経細胞への分化を誘導し,分化された神経細胞へのカルシウムイメージングを検討している. 具体的には,分化された神経細胞に対して麻酔薬を曝露することで,麻酔薬の神経毒性を機能的に調べることを検討する.2018年に公開された研究では,発達時期の異なる初代培養神経細胞にCaイメージングと形態実験を行った.ミダゾラムやチオペンタールと比較して,プロポフォールは培養時期が短いと細胞死を促進することが判明し,麻酔薬の神経毒性は曝露時間や投与量,神経細胞の成熟度と関係することが示唆されている.現在も,各麻酔薬の神経毒性の個性を知るために,初代培養神経細胞を用いての解析も併行して行っている.初年度は,培養期間の異なる細胞に種々の濃度のアセトアミノフェンを曝露し,アセトアミノフェンの神経毒性を形態的に調べた.培養期間の違いによる神経毒性の程度に有意差はなく,濃度の変化に伴い細胞生存率の変化を認めた.次年度はカルシウムイメージングを用いて神経毒性を機能的に解析する.またアセトアミノフェンと異なる鎮静薬を使用して同様の実験を行うことで,実際の小児への投与について提言が可能になり,iPS細胞への実験についても有益となり得る.
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