研究課題/領域番号 |
20K17848
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
小幡 由美 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (80410091)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 入院期間短縮 / 長期予後改善 / 急性腎障害早期診断 / 診断精度向上 |
研究実績の概要 |
大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は、臓器予備能の低い超高齢者に対して一時的に心停止に近い状態とし弁を留置するため、周術期の急性腎障害(AKI)の頻度が高く、死亡の危険因子になるといわれている。AKIの診断は血清クレアチニン(Cr)と尿量によってされるが、血清Crが上昇するまでに1~2日要する為、診断が遅延するという問題がある。本研究では、バイオマーカーを組み合せることによってTAVI後AKIの診断精度が向上するか調査し、また、これらのバイオマーカーがAKIから慢性腎臓病へ進行する予測因子となるか調査した。研究期間2年間で173例を検討し、術後AKIは12例(7%)であった。この173症例を解析したところ、術前L-FABP、術前TIMP2/IGFBP7、術後4時間Clusterinが術後AKI発症の予測因子になるという結果に至った。また、これらのバイオマーカーを組み合せることによって診断精度が向上することが示された。しかし、術前eGFR(推算糸球体濾過量)によって術後AKIの発症を予測できる可能性が高く、尿中バイオマーカーの優位性についてまでは示すことができなかった(現行用いられている腎機能の検査項目であるeGFRと尿中バイオマーカーが同等の診断精度であるという統計結果であった)。また、本研究では、術前eGFRは感度が高いが、尿中バイオマーカーは特異度が高いという結果が示されたため、それぞれの利点を組み合わせることでTAVI後AKIの早期診断が可能になり、なおかつ、診断精度も上昇するという結論に至った。現在論文作成中である。また、尿中バイオマーカーがAKIから慢性腎臓病へ進行する予測因子となるかについても、現在統計処理を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検体採取・結果解析・統計処理まで予定通りに終了し、追加検体の採取や追加研究はなく、論文作成に至っている。術後急性腎障害から慢性腎臓病への進展については最終年度で解析予定であったので今年度着手予定であり、研究計画書の予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)後急性腎障害の早期診断に、尿中バイオマーカーは有用である、という研究仮説通りの結果に至った。しかし、現行の腎機能評価に用いられている、eGFRに対する優位性についてまでは示すことができず(ほぼ同等であった)、今後の研究課題である。今後は、尿中バイオマーカーの特異度が高いという利点を生かし、スクリーニング検査としての有用性を示していきたい。また、採血を必要とせず、腎機能を評価できるという簡便性も生かしたスクリーニング検査として、定性試験キットとして市販されているレナプロとの関連を調査し、その有用性についても検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究計画通り進行している。研究結果の精査後、追試験を実施する。その為、次年度使用額が生じた。翌年度分と合わせて、追試験を実施する予定である。
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