リドカインなどの局所麻酔薬の臨床的に適切な濃度(500 μM~24 mM)は、神経細胞由来の細胞や癌組織由来の確立された細胞株の細胞死を誘導するが報告されている。これらの知見と一致するように、私たちは神経由来のSH-SY5Y細胞およびHeLa子宮頸癌細胞において、1 mM-10 mMのリドカインが細胞死を促進するのに十分であることを示してきた。 本研究ではこの成果を基礎として,様々なミトコンドリアDNA変異を持つtransmitochondrial cybrids細胞を用いまたミトコンドリア蛋白質の発現を遺伝子操作で制御するなどの手法を駆使して局所麻酔薬の標的蛋白質の同定することが本研究の主たる目的であった。この目的の達成のために局所麻酔薬が酸素代謝・エネルギー代謝へ及ぼす影響の検討、局所麻酔薬による細胞障害のハイスループットアッセイ法の確立、局所麻酔薬の標的となる蛋白質の同定と発現調節による酸素代謝・エネルギー代謝への影響の検討を試みた。 生細胞内のATP濃度をリアルタイムに可視化できる蛍光プローブ ATeamを用いた検討については初年度に実験系を作動させる事ができずに未達成であった。今年度もこの実験系の確立に努めたが最終的に未達となった。 細胞障害の成立においてミトコンドリア電子伝達系は局所麻酔薬の標的となる事を示す実験的なエビデンスは得られた。
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