研究課題/領域番号 |
20K17852
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
川口 哲 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60814217)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 敗血症 / β3受容体 / NO産生 / iNOS |
研究実績の概要 |
敗血症性心筋症におけるβ3アドレナリン受容体の誘導型NOS調節機構の解明について 我々は、エンドトキシン敗血症モデルマウスにおいて、心筋ミトコンドリアの機能異常が関与することを報告したが、その際、β3アドレナリン受容体の制御により脂肪酸代謝が変化することを突き止めた。すなわち、敗血症モデルマウスでは脂肪酸の心筋内への取り込みを認めるものの、ミトコンドリアへの輸送が遮断されていることが判明した。ミトコンドリアエネルギー合成能を検討したETC complexタンパクI-Vの発現は、コントロール群とβ3受容体アゴニスト群で低下したが、アンタゴニスト群で改善し、実際心筋ATP産生量も回復した。 このことは、免疫染色での心筋内脂肪滴の蓄積と3D電子顕微鏡でのミトコンドリア形態の維持と周囲の小胞体構造の破壊像を認め、また、COX-1染色では、敗血症で低下した発現はβ3受容体アンタゴニスト群で回復した。いずれも、これらの仮説を支持する結果となった。 今回、β3受容体の制御は、NFkBを介するIL-6などのサイトカインの産生を抑制し、iNOSの誘導も抑制したが、NO産生量そのものは変わらなかったことから、別のNO産生経路が存在することが示唆された。アンタゴニスト群では、NO産生の低下とiNOSの発現減少が観察された。 これらの結果より、敗血症で産生されるエンドトキシンによる心不全に対して、β3受容体自体がiNOSの制御にかかわることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響で、動物実験が制限され。遂行不可能だった。
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今後の研究の推進方策 |
iNOSの発現の違いが、NO産生量に大きく関与することが明らかになったが、eNOS, nNOSなど他のNOSの影響がどの程度であるのか、また、虚血を主体とした慢性心不全でのNO産生による心保護作用と敗血症での心機能低下でのNOの役割は異なっている可能性があり、これらも検討課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症のため動物実験が遂行不可能であったことが最大の理由
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