研究実績の概要 |
敗血症マウスモデルにおいて、腸内細菌叢は著明に変化していた。急性期にEnterobacteriaceae科は増加した。これまで全身炎症反応症候群の患者ではEnterobacteriaceae科などの通性嫌気性菌が多い場合に死亡率が高いと報告されており、 今回のEnterobacteriaceae科の増加は敗血症と関わりがある可能性が示唆された。Lachnospiraceae科、Ruminococcaceae科は亜急性期に増加した。これらは制御性T細胞の分化を促進する酪酸を産生し、炎症を抑制するといわれている。今回のLachnospiraceae科・Ruminococcaceae科の増加は炎症を制御する方向に働いた可能性が示唆された。 便中代謝産物は、侵襲後Valine,leucine,isoleucineなどのアミノ酸、Betaine,Cholineなどは増加する傾向にあった。Butyric acid,Valeric acid,Propionic acidなどの短鎖脂肪酸は減少する傾向にあった。Valine,leucine,isoleucineは通常腸管上皮からは産生されないもので、今回これらが増加したのは、敗血症と関連する可能性があると考えられた。Cholineは細胞膜構造を形成したり、アセチルコリン合成の前駆体となり体内でBetaine, TMAOに代謝される。これらが増加したのは、敗血症が関連していた可能性が示唆された。 Butyric acid,Valeric acid,Propionic acidなどの短鎖脂肪酸は、大腸粘膜細胞の主要なエネルギー源となる。SIRS患者や敗血症患者では短鎖脂肪酸の量は減少すると報告されており、この減少は敗血症と関係する可能性があると考えられら。
|