(1)敗血症モデルマウスにおける腸内細菌叢の変化:盲腸結紮穿刺による敗血症モデルマウスを用いて処置前(day0)、処置1日後(day1)、3日後(day3)、7日後(day7)の糞便を採取し、16S rRNA sequencingにより解析した。day1でProteobacteria門のEnterobacteriaceae科が増加し、Bacteroidetes門およびFirmicutes門の割合は減少した。Enterobacteriaceae科は腸管炎症に伴って増加するとされ、この増加は敗血症と関わりがある可能性が示唆された。day7ではProteobacteria門は有意に減少し、Firmicutes門のLachnospiraceae科とRuminococcaceae科が増加した。増加したこれらは制御性T細胞の分化を促進する酪酸を産生することが知られており、炎症を制御する方向に働いた可能性が示唆された。 (2)敗血症モデルマウスにおける代謝産物の変化:CE-TOFMSを用いて代謝産物の解析を行った。Valineなどの分岐鎖アミノ酸や、動脈硬化などに関与するCholineなどが増加した。一方、抗炎症効果のある酪酸、吉草酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸は減少した。 (3)腸管のサイトカイン産生:腸管内のTNF-α、IL-6、IFN-γなどのサイトカインは、day1で増加しday7で減少した。抗菌分子であるCathelicidinはday1で増加しday7で減少した。これはday1におけるEnterobacteriaceae科の増加など腸内細菌叢の変化に対し抗菌分子の産生が増加した可能性が示唆された。 (4)腸管の免疫細胞:腸管内のFoxp3+細胞の割合はday1・day7で増加し、抗炎症反応が亢進したことが示唆された。
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