研究課題/領域番号 |
20K17869
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
春名 純平 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (70867449)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重症患者 / 睡眠 / 脳波 / メラトニン |
研究実績の概要 |
本年度はまず,人工呼吸を必要とする敗血症患者の睡眠の評価として小型脳波センサーの有用性を検討した.対象は18歳以上の人工呼吸を必要とした敗血症患者12名とした.検査は,夜間21から翌日6時までPSG(Alice5,Philips Respironics,USA)及び小型脳波センターを患者に装着した.各機器の睡眠段階の評価は30秒毎のエポックに分割し,充分な経験のある専門員が解析した.分析は,小型脳波センターとPSGによる各睡眠段階(Wake,N1,N2,N3,REM)の一致率にはintra-class correlation coefficients(ICC)を算出し,全体の一致率はcohen's kappa係数を用いた. 【結果】対象者の平均年齢68±14歳であった.検査中,人工呼吸管理に伴う鎮痛鎮静のため,全ての患者でフェンタニル(平均33.3±8.9ug/hr)が投与され,鎮静のためミタゾラム,デクスメデトミジン,プロポフォールをそれぞれ2例(16.6%),7例(58.3%),9例(75%)で用いた.ZA-X とPSGの各睡眠段階(Wake,N1,N2,N3,REM)のICCはそれぞれ0.80,0.50,0.67,0.44,0.01であった.PSGとZA-Xの各睡眠段階の一致率は,N2で最も高く(64.6%),N1ではほとんど一致しなかった(5.8%).cohen’s kappa係数は0.21であった. 【結論】敗血症患者で人工呼吸管理下でのPSGと比較したZA-Xの睡眠段階の精度を確認した結果,低い一致率が示された.PSGとは異なり小型脳はセンサーの脳波電極は右前額部と耳介後部の2カ所のため,敗血症や鎮痛・鎮静下での正確な睡眠評価には不足していた可能性がある.今後研究を進める上で小型脳波センサーの有用性が検証できなかったため,PSGで睡眠を測定することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症によって患者数が減少しており,適切な患者をリクルートすることができてない.また,患者や家族に対する同意取得をタイムリーに行うことが困難であり対象の選定に難航している.
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今後の研究の推進方策 |
小型脳波センサーでの睡眠評価を試みたが,敗血症患者の睡眠を適切に評価することが困難であることが明らかとなった.今後は敗血症患者の睡眠評価の方法として,ゴールデンスタンダードであるポリソムノグラフィを用いて評価することとする. 次年度は重症患者の睡眠のモニタリングを継続的に行い,血清メラトニンの濃度と睡眠段階との関連性を検証し,重症敗血症患者の睡眠と睡眠関連ホルモンとの関連性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定の通り本研究は4年間で行う研究である.昨年度は解析に関する症例数が十分に得られなかったため、今年度継続的に症例を蓄積する予定である.したがって,今年度,10症例の重症敗血症患者の脳波を撮影し,重症患者の睡眠状態を観察する.その解析のために,血清メラトニン測定ELISAkitの費用,脳波測定のための解析に係る解析料金に費用及び論文投稿のための校正費用及び論文投稿に係る費用が必要となる.
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