放射線被ばくに対応する医療従事者は常に人材不足である。その要因として、被ばく医療に対する教育不足・知識不足が原因で被ばく医療に対する過度な不安があると考えられている。そのため、効果的な教育が被ばく医療に対する不安やストレスなどの精神的負荷を低減できるのではないかとの仮説をたてた。本研究では、原子力災害関連研修中の実際の心電図波形を解析することで、どの程度のストレス負荷がかかっているかを経時的に数値化し、客観的に評価する。 これまで看護師54名、医学部学生127名に参加いただき、研修中の各業務・手技におけるストレスデータを取得した。具体的には研修受講中にシャツ型心電計を着用いただき、その間の心拍変動から交感神経/副交感神経バランスを数値化することでストレスデータを算出した。緊急被ばく医療セミナー実習中の行動を経時的に複数項目に分類し、各行動中のストレス値を算出した。その結果、除染処置でストレス値が高値になる傾向にあった。また除染が終了し、傷病者の退室時や自身の防護衣脱衣時には極端にストレス値が低下していることが明らかとなった。一方で放射線と関連しない通常の外傷診療実施中のストレス値は比較的低値であった。 除染作業等、被ばく医療に特殊な業務でストレス値が高値であり、これまで予想されていた結果と同様であった。本研究では心拍変動を用いることで、そのストレス値を客観的指標として示すことができている。本結果でストレス値が高値であった項目について、今後より重点的に教育や訓練を行っていくことで、効率的に従事者のストレスを低減していくことが可能と考えられる。
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