研究課題/領域番号 |
20K17873
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山元 良 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (90528853)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 水素ガス / 腸管虚血 |
研究実績の概要 |
腸管虚血は頻度の高い腹部救急疾患であり、病態の持続によって腸管バリアの破綻によるバクテリアルトランスロケーションから敗血症などに進展することが示唆されており、また、腸管壊死に至れば外科的切除が必要となる重症度も高い疾患である。一方で、虚血の原因解除以外に確立した治療法はなく、腸管虚血から腸管壊死への進行を抑制する治療法は存在しない。そこで我々は、腸管虚血モデルラットに水素ガス吸入を行い、組織障害軽減や生命予後改善効果の検証を行った。 モデルラットに関しては、8週齢のSDラットを小開腹下し、腸間膜動脈を45分間から75分間クリッピングすることで腸管虚血・再灌流状態を作成した。吸入させる水素ガス濃度に関しては、本研究室にて現在進行中の心停止後症候群を対象としたランダム化比較臨床試験を参考に、2%とした。結果として、虚血直後から120分間の水素ガス吸入によって、再灌流から24時間後の腸管粘膜ダメージが軽減されている所見が組織学的(H-E染色)に観察された。また、ラットの個体差および虚血時間による組織障害の程度にばらつきが大きく、60分以上の完全虚血において、その効果が出やすいことが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
虚血時間が75分を超えると、ラットでは非常に強い腸管壊死が発症するため、60分間の虚血が、ヒトによる虚血再灌流障害と似た病態を再現できることが明らかになった。虚血直後から120分間の水素ガス吸入によって、再灌流から24時間後の腸管粘膜ダメージが軽減されている所見が組織学的(H-E染色)に観察された。また、cas-3染色によって、壊死に至る腸管の細胞を観察することによって、水素ガスが再灌流障害による細胞壊死を阻止している所見が観察された。
|
今後の研究の推進方策 |
水素ガスによって虚血を免れている細胞が、どの種別の細胞であるかを同定するため、real time PCR法や二重染色法を行っていく。また、水素濃度や投与時間を調整し、その効果量を測定していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会へコロナウイルス流行のために参加できなくなったため、また、効率的な物品調達を行ったため、次年度使用額が生じました。使用計画に関しましたへ、現在進行中の腸管虚血モデルラットを用いた研究の継続と、学会での発表や論文執筆に関わる経費で使用する予定です。
|