研究課題/領域番号 |
20K17875
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 暢夫 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (80439869)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 集中治療後症候群 / 睡眠障害 / せん妄 / 急性ストレス反応 |
研究実績の概要 |
集中治療室(ICU)退室後には集中治療後症候群(PICS)と総称される認知機能障害や運動障害、呼吸機能障害などの後遺症が生じることが報告されている。客観的睡眠指標の障害がPICSおよびその後の転帰に及ぼす影響について詳細な研究は現状では不十分である。また、ICUにおける睡眠の客観的評価法は確立されておらず、睡眠障害とせん妄発症との関係性は十分に検討されていない。本研究ではまず、(1)脳波計測型とマットレス型の睡眠計を比較し、ICU入室中の睡眠障害がせん妄発症を予測することを検証した。東京女子医科大学病院で手術後ICU入室した患者を対象に調査を行い、マットレス型の睡眠計は睡眠時間を過剰に見積もる可能性があることが示唆された。脳波計測型の睡眠計からは、長時間睡眠と断眠がせん妄と関連する可能性が示唆された。続いて、(2)ICU退室後の不眠症状に注目し、睡眠の評価と精神・身体の問題との関係を検討した。72時間以上ICUに入室した成人患者を対象に、客観的な睡眠評価と日常生活動作の評価を行い、自記式の重症度評価で疲労度、急性ストレス反応、抑うつを評価した。その結果、ICU退室後の不眠はICU入室前の不眠とは独立して生じていること、身体的要因や精神的要因だけでなく、ICU入室中に生じうる急性ストレス反応に対する脆弱性が影響している可能性が示唆された。さらに、(3)(2)の対象患者に退院後6か月後に健康状態に関するアンケート調査を行い、ICU退室後に顕著であった不眠症状は、退院半年後に改善傾向が見られた。退院半年後の疲労感には入院中の不眠の程度が関連したことから、睡眠の改善に向けた介入が退院後の疲労感軽減のターゲットとなりうる可能性が示唆された。 (1)は学会発表と論文公表を行った。(2)は学会発表し現在論文作成中の段階である。(3)は学会発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の(1)は学会発表と論文公表を行った。(2)は学会発表し現在論文作成中の段階である。(3)は学会発表予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載の(2)の研究について退院2年後までの経過フォロー中であり、退院前の身体、精神機能評価についての中間発表の論文化とともに、フォロー終了後の結果を踏まえたアウトカムに関する研究発表を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国際学会への参加しなかったこと、年度途中の異動により被験者エントリー終了を予定よりも早めたことが挙げられる。次年度は国内外の学会への参加、発表、英語論文化の費用に充てていきたい。
|