研究実績の概要 |
感染およびそれに伴う合併症対策は救急・集中治療分野における最重要課題の一つである. 感染管理において抗菌薬の適正投与には病原菌の同定が重要な情報となるが, 現在の標準的検査である細菌培養法は精度や迅速性において解決すべき問題点を抱えている. 今回, 16SrRNA遺伝子を指標としたMinIONを用いた迅速細菌同定法の有用性を検証し, 臨床的アウトカムの向上に繋がる技術基盤を確立することを目的とした. 対象は, 当院に救急搬送され, 腹部緊急手術を行った汎発性腹膜炎患者16例を対象とした. 手術中に腹水を採取し, 得られた検体を分割し, MinIONによる解析と並行して一般細菌培養検査による菌種同定を行い結果を比較する. 16例の内訳は, 上部消化管穿孔が4例, 下部消化管穿孔が7例, 壊疽性・穿孔性虫垂炎が3例, 壊疽性胆嚢炎が2例. 今回, 陰性対照を置き実験を行ったが明らかなコンタミネーションは認めなかった. 一般細菌培養の結果陰性であった5例について, MinIONでは細菌の同定が可能であった. 上部消化管穿孔のうち, 一般細菌培養の結果陽性であった2例はMinIONでも同じ結果を認めた. 下部消化管疾患・虫垂炎・胆嚢炎のうち, 一般細菌培養の結果陽性であった9例はMinIONでは一般細菌培養で同定できなかった細菌の同定も可能であった.MinIONによる迅速細菌同定法はより高精度に細菌の判別・同定を行うことができ, 感染症診断ツールとして有用である.
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