本研究は、①難治性心室細動・心室粗動患者の予後と搬送時間との関連性を明らかにし、その結果に基づいたプロトコルを作成、②プロトコルを実際に施行した場合のシミュレーション研究を施行することを目的としている。2023年度は、「ECPR施設への搬送による効果が時間依存性である」ことを加味したモデル(新モデル)をもとに解析を行った。具体的には、神戸市内の院外心肺停止レジストリより心肺停止患者のデータを使用して、「病院までの搬送時間と患者予後」を検討するための統計モデルを作成した。神経学的予後良好を目的変数としたマルチレベル多変量ロジスティックモデルを選択し、説明変数に搬送時間、搬送先医療機関のECPR体制、年齢、性別、目撃の有無、バイスタンダーによる心肺蘇生の有無、AED使用の有無、救急隊による薬剤投与の有無、気管挿管の有無、電気的除細動の回数を用いた。また、シミュレーション研究を行うために、搬送時間推定のモデル作成、予後予測モデルの作成を行った。しかしながら、予測モデルの精度から推定が難しいと判断したため、研究計画を一部変更した。シミュレーション研究ではなく、予測モデルから推定された神経学的予後割合を市域ごとに提示することにより、地域ごとの問題点を記述することで代替した。解析結果は、第26回日本脳低温療法・体温管理学会において発表した。現在、これらの内容について論文執筆を行っており、投稿の目途が立った状況である。
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