院外心停止蘇生後患者において、非侵襲的手法により脳血管自動調整能 (Cerebrovascular Autoregulation: CVAR)を評価し、CVARが検出されない時間が増えるほど、死亡率が有意に上昇することを示し、報告した (Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism. 2023 Nov; 43(11): 1942-1950.)。 健常な状態であれば本来備わるCVARという全身の血圧が変化しても脳血流量を一定に保とうとする機能が心停止蘇生後に低下する可能性は示唆されていたが、患者予後との関連はこれまで不明であった。今回、研究グループは、脳局所酸素飽和度と平均血圧の時系列データから算出される移動相関係数により、CVARの経時的変化を評価し、その有無を「時間依存性共変量」とした生存解析を行った。この結果、CVARの未検出時間が長いほど、心停止後の死亡率が有意に上昇する可能性を示した。本研究で得られた知見は、まず心拍再開後の神経予後予測に役立つ可能性があり、回復する可能性がある方の早期の治療差し控えを回避することに役立つ可能性がある点である。加えて、心拍再開後にCVARを適正に維持する治療・管理が患者予後を改善する可能性を示唆するものであり、今後、脳循環に基づいた心停止蘇生後の治療管理に応用することで、個々の患者に応じた治療の最適化(個別化医療)に繋がることが期待される。
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