研究課題/領域番号 |
20K17896
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
野島 剛 岡山大学, 大学病院, 医員 (60869717)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水素 / VV-ECMO / 抗凝固療法 / 抗炎症作用 |
研究実績の概要 |
本研究における研究の目的は水素の抗炎症作用に着目したVV-ECMO中の新規抗凝固療法の開発である。ラットモデルを用いて、水素が出血リスクをぞうかさせることなくECMO中の抗凝固作用を強化できるかを検証している。そのために3段階の実験計画を設定している。その段階とは、①健常ラットを用いて最適な抗凝固療法を含めたVV-ECMOモデルの確立と水素の安全性の確認、②リポ多糖(LPS)肺炎モデルを用いて、水素投与によるVV-ECMO中の凝固因子の消耗と回路内血栓の抑制効果の検証、③②で効果が認められれば、水素の抗凝固作用のメカニズムを探求する、の3段階である。 現在、①のVV-ECMOモデルの確立ができた。右頸静脈より脱血、右大腿静脈より送血を行いつつローラーポンプとラット用人工肺を装着した回路を使用しモデルを作成した。なお、ヘパリン量に関しては、50単位/kg/hrで安定している。その際の回路内には血栓は認められなかったので、今後はこのラットをモデルとして使用する。水素の安全性に関しては、気泡形成やバイタルサインの変動を見つつ量を調整している。 ②におけるLPS肺炎モデルの確立も行うことができている。先行研究のラットでは気管内投与のLPS量は2.5mg/kgであったが、肺炎が重症化してしまいラットが研究に耐えられない可能性があることから、LPS量は1.0ml/kgに変更して研究を行なっていくこととした。水素の安全性が確保でき次第、LPS肺炎モデルを使用して水素投与による凝固因子の消耗と回路内血栓の抑制効果の検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VV-ECMOモデルの確立ができた。右頸静脈より脱血、右大腿静脈より送血を行いつつローラーポンプとラット用人工肺を装着した回路を使用したモデルを確立した。ヘパリン量に関しても確立しており、50単位/kg/hrで行うこととした。この条件下において回路内には血栓は認められなかった。 LPS肺炎モデルの確立も行うことができている。先行研究のラットでは気管内投与のLPS量は2.5mg/kgであったが、肺炎が重症化してしまいラットが研究に耐えられない可能性があることから、LPS量は1.0ml/kgに変更したモデルを作成した。LPSを気管より投与し両肺に到達させた後に呼吸循環が安定しており生存することも確認している。 現時点では、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
VV-ECMOラットのモデルにおける水素投与の安全性を現在は確認している状態である。水素投与における、気泡形成とバイタルサインの変動、それによる研究の安全性の確認をしていく。現時点では、2%の水素を添加する予定である。もし、水素投与の安全性が確立されないのであれば、水素の量を減量して行うことも考慮する。 LPS肺炎モデルに対する水素投与に関しては、水素投与の安全性が確立された時点で行う。現時点では、水素投与による抗凝固作用の確認を行うことを第一にしている。そのために、単球やマクロファージ内のHO-1やサイトカイン(IL-1b、TNF-αなど)の発現を確認するためにmRNAやタンパク分析などを行なっていく。同時に、水素の血管内皮への効果にも着目し各種凝固因子の確認を行なっていく予定である。 もし、水素投与により抗凝固作用を認めないのであれば、より濃度の高い水素投与や水素投与方法の変更を考慮して研究を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初計画通りに使用していたが、端数が生じた。 (使用計画)今後は、当初まで行なってきた実験データをもとに、必要な薬剤・試薬・抗体に使用する予定である。また、研究成果の発表目的で学会参加費などに使用する予定である。
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