研究課題/領域番号 |
20K17898
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
太田 浩平 広島大学, 病院(医), 講師 (50526225)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ICU-AW / 集中治療後症候群 / 敗血症 / 動物実験 |
研究実績の概要 |
昨年度に続き,CLP(cecal ligation and puncture)マウスでの実験を継続した. CLP手術によって誘発された敗血症後の精神・認知障害に関連したマウスの行動の長期的障害におけるTSPOの役割を調べた。(i)wile type (WT) + sham, (ii) WT + CLP, (iii) TSPO knock out + CLPの3群に分けた。手術後17日目までの生存率と体重変化を評価した。また、生存したマウスについて、不安様行動、うつ様行動、認知機能、運動活動、前肢筋力を、それぞれ高架式十字迷路、尾懸垂試験、Y迷路、オープンフィールド試験、握力試験により評価した。行動実験終了後に、マウスの海馬を採取しRNAを抽出後、RNA-seqにより、遺伝子発現の変化を調べ、行動試験との関連を評価した。 TSPO遺伝子を欠損させたマウスでは、WTマウスに比べて、CLPによる死亡率が高く、体重減少が長期に遷延した。また、敗血症回復後の不安様行動、うつ様行動、前肢筋力低下がWTマウスに比べて増悪することが明らかとなった。海馬のRNA-seq解析により、C1q補体経路の遺伝子(C1qb、C1qc、Tyrobp)の発現上昇が、不安様行動の程度と有意に相関があることが明らかになった。これらの遺伝子の発現の上昇は、尾部懸垂試験におけるうつ様行動や、握力試験での筋力低下とも関連があり、C1q経路の敗血症後症候群における役割を支持するものであった。C1q経路は病的なシナプス除去のタグとして最近注目されていることから、本研究は、C1q経路が敗血症後症候群で観察される精神・認知障害に関与していることを示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行に伴い,臨床面での負担が大きく研究にエフォートを割けず,また研究における家兎の管理などについて助言を得る予定の担当者の異動なども重なった.
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今後の研究の推進方策 |
確立した人工呼吸管理や抗菌薬治療などの介入を行う,より実際の集中治療に則したモデルの確立を目指し,筋肉組織の病理学的評価も並行して進める.またこれらの知見を家兎へも応用に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により研究の遂行に遅れが生じたため,研究計画に沿った物品の購入ができなかった.次年度は引き続き動物実験によるモデル確立を目指す予定である.
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