研究課題
ICU入室患者の上下肢神経筋電気刺激療法の筋力、代謝、長期予後に与える影響について研究している。ICUに入室するような重症患者では筋肉の萎縮が1週間で15-20%も進行し、社会復帰できなくなることがある。このような状態を集中治療後症候群という。この急性期の筋肉の萎縮を予防するために神経筋電気刺激療法が有効と考えている。昨年米国集中治療医学会雑誌に神経筋電気刺激療法を用いることで急性期の上下肢の筋肉の萎縮が予防できることを報告している(Nakanishi N, et al. Crit Care Med:e997-e1003,2020)。しかし、この神経筋電気刺激療法が単施設のみでなく、日本で広く普及して患者さんの役にたつにはどうしたらよいか、また本当に患者さんの社会復帰に役立っているのか研究を継続している。令和3年4月に徳島大学から神戸大学に移動して、新しい施設で研究を継続していくための教育活動、実際の患者さんでの使用など、神戸大学に順応するのに時間を要している。また退院した患者さんの1年後、2年後の長期的な予後を評価することは容易ではなく、そのためのデータベース構築にも働いている。神戸大学でも適切な筋肉量評価、身体機能評価も徐々にできるようになってきて、今後神経筋電気刺激療法が長期的にどのような影響を与えるか研究を継続していく予定である。科研費を用いて神経筋電気刺激療法の介入に要する物品、また身体機能、筋機能、筋肉量を評価するための物品、発表、論文化など研究費を使用させて頂き研究を継続している。
2: おおむね順調に進展している
ICU入室患者の上下肢神経筋電気刺激療法の筋力、代謝、長期予後に与える影響について順調に研究が進行している。令和3年4月に徳島大学から神戸大学に移動してソリウス(ミナト医科学株式会社)も神戸大学に移動させて集中治療室で使用している。また筋肉量評価のための超音波での測定の有用性の研究(Clin Nutr ESPEN.45:177-183,2021)、さらには多職種の方が測定できるように教育にも力をいれている。一方で、長期予後をフォローするためのシステム作りも行っている。日本集中治療医学会協力のもとJIPADのデータシステムとともに集中治療後症候群(PICS)の評価ができるデータシステムを構築中である。研究の結果について日本集中治療医学会のシンポジウム、心臓血管外科学会のシンポジウム、呼吸療法医学会などで積極的に発表している。雑誌や論文の執筆も複数を行っている。この上下肢神経筋電気刺激療法の論文に対して日本集中治療医学会の論文奨励賞を2022年3月20日に受賞した(Nakanishi N, et al. Crit Care Med:e997-e1003,2020)。
神経筋電気刺激療法の臨床応用、筋肉量評価、筋力評価、長期予後の評価が徐々にできるようになってきており、このままデータを構築させていく必要がある。コロナ化で患者さんへのリハビリが積極的にできなくなるような事態もあり、様々な障害があるものの、今回の研究課題遂行にむけて研究は順調に進行している。また臨床での神経筋電気刺激療法の影響のみでなく、敗血症マウスにおける神経筋電気刺激療法も検討することで、よりそのメカニズム解明にもつながる可能性も検討している。実際の患者さんでは筋肉の生検までは採取できず、侵襲的な採血なども限られる。そのため神経筋電気刺激療法が代謝や長期予後に与える影響を検討するためのメカニズムを患者さんのみで継続していくか、敗血症マウスで解明していくか検討中である。
2021年4月に徳島大学から神戸大学に移動して、新しい環境に順応するのに時間を要した。実際の重症患者での神経筋電気刺激療法の使用、さらには筋肉量評価の指導、集中治療後症候群を評価するためのデータベース作りなどの時間を要したため、使用金額が予定よりも少なくなった。しかし2022年度は多くの患者さんで神経筋電気刺激療法の使用が予定されており、神経筋電気刺激療法が代謝や集中治療後症候群にどのような影響を与えるのか積極的に研究費を使用していきたい。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
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