敗血症は、感染症に対する宿主の過剰な反応により臓器障害が起こった状態である。凝固系は感染症に対する宿主反応の一つであり、凝固障害を合併すると敗血症の死亡率はより高くなることが知られている。補体は数十のタンパク質から構成される自然免疫の一つであるが、ヒト敗血症における補体活性化や制御の状態、凝固障害との関連は不明であった。代表研究者らは、補体の最終産物である膜侵襲複合体(Membrane attack complex: MAC)を補体活性化の指標として、敗血症患者の血漿MAC値と凝固障害との関連、重症度や死亡率との関連を検討し、凝固障害を合併した群は血漿MAC値が高く、また、血漿MAC値が高い群は重症度が高いこと、死亡率も高くなる傾向があることを明らかにしてきた。 申請者らは凝固障害を伴う重症の敗血症においても補体が生体侵襲となっており、補体を制御することで敗血症の予後を改善できる、と仮説を立てた。ヒト敗血症における高度な補体活性化と関わる「活性化経路の解明」、「補体活性化の経時的変化の解明」、「遺伝的リスクの解明」、「補体制御ポイントの探索」について研究を進めるために、科研費を得ている。 2020年度は、主に補体活性化と関わる経路の解明を行った。補体の初期活性化経路には代替経路、古典経路、レクチン経路があり、すべて補体終末経路の活性化へとつながる。敗血症においては、代替経路の活性化産物は、予後ともっとも関わっている所見が得られた(投稿準備中)。その他、敗血症における補体活性化の経時的変化について、症例の集積を重ねている。
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