研究課題/領域番号 |
20K17904
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
伊澤 祥光 自治医科大学, 医学部, 講師 (90565699)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大静脈系血行動態の変化 / 大動脈遮断 / 下大静脈遮断 / 出血性ショック / 肝背側下大静脈損傷 / Phase Contrast MRI |
研究実績の概要 |
肝背側下大静脈損傷の救命率は非常に低く、これまでに開発された止血方法では救命率の改善には至らなかった。近年になり、動脈性出血に対して大動脈遮断バルーンが使用されるようになったが、下大静脈損傷・出血に対する有効性は明らかではない。また、ショック状態における大動脈・下大静脈遮断が大静脈系の血行動態にどのような影響を与えるかも明らかではない。このため、出血性ショック時の大静脈系の血行動態が大動脈・下大静脈遮断によりどのように変化するかを観察し、それらを踏まえ肝背側下大静脈損傷に対する有効な止血方法を開発することを目的とする。本研究では、ショック状態の実験ブタに対して、大動脈・下大静脈遮断時の大静脈系の血行動態がどのように変化するか観察するところまで行う。 令和2年度は3頭のブタに対して実験を行った。全身麻酔下のブタに対して中心静脈ラインを確保し、大腿動脈から大動脈遮断バルーンを挿入、胸部大動脈内にバルーンを留置した。下大静脈では、肝の頭側と尾側にクランプ用のターニケットを留置した。 次に、循環血液量の約20%にあたる瀉血を行ってショックモデルを作製した。当初、30%の瀉血を行う予定であったが、心停止が切迫するため瀉血量を20%に減量した。ショックの後に輸液による外傷蘇生を行い、バイタルサイン測定と静脈血行動態測定を行った。脈拍、血圧、中心静脈圧、心拍出量、体血管抵抗はEV1000を用いて記録した。単位時間当たりの循環血液量の変化などの静脈系の血行動態はPhase Contrast MRI(PC-MRI)で測定・記録した。PC-MRI測定は、上大静脈、肝頭側下大静脈、肝尾側下大静脈の3点で測定した。また、これらはそれぞれ以下の条件で測定した。①外科的介入なし②大動脈遮断のみ③下大静脈クランプ+大動脈遮断④下大静脈クランプのみ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合計4頭の実験が終了した時点でサンプルサイズの推定を行うが、必要サンプルサイズが6頭前後と仮定すると、令和2年度で3頭分の実験が終了、令和3年度は3頭に対して実験を行うことになる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、合計4頭の実験を終えた時点で測定データの解析を行い、実験における必要サンプル数を検討する。実験予算の範囲内となるが、可能であれば必要サンプル数に達するまで実験を行う。 令和4年度の全データの解析を行い、学会発表・論文作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:実験用ブタのシェアリングや機材の再利用により実験経費が節約できたため。 使用計画:消耗品を中心とした2021年度実験費用に充てる。
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