急性中毒において第一選択で実施される活性炭吸着療法は、活性炭が吸着できる様々な物質に適応できる。しかし、一部の物質は無効とされ、有効な吸着剤はほとんどない。そこで、実臨床で使用されている薬用炭が無効な 8 物質 (メタノール、エチレングリコール、鉛、硫酸タリウム、炭酸リチウム、塩化カリウム、臭素酸ナトリウム、ホウ酸) を対象に、代替吸着剤として、薬用炭より高い比表面積の超活性炭、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の吸着能を評価した。 擬似胃液 (pH 1.2) および擬似腸液 (pH 6.8) 中で、対象物質と吸着剤の混合比を変化させ、吸着剤 1 g あたりの吸着量を評価した。超活性炭は、アセトアミノフェンに対して薬用炭より約 3 倍高い吸着量を示したが、薬用炭が吸着しないまたはほとんど吸着しなかった無効 8 物質に対して、薬用炭と同程度の吸着量しか示さず、代替吸着剤としての有用性が認められなかった。比表面積の増大は、親和性の低い物質(分子量が小さい、水溶性が高い、イオン化した物質)に対する吸着に有利に働かないことが明らかになった。 陰イオン交換樹脂のコレスチラミンは、ホウ酸に対して、薬用炭と同程度の吸着量しか示さず、代替吸着剤としての有用性は認められなかった。吸着には胃および腸内の pH で十分にイオン化している必要があると考えられた。 一方、陽イオン交換樹脂のポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、鉛、硫酸タリウム、炭酸リチウム、塩化カリウムに対し薬用炭より高い吸着量を示し、有用な代替吸着剤であることが示唆された。陽イオン化する他の金属や無機物質による中毒に対しても有用な可能性がある。ただし、生体中に存在する陽イオンの吸着量への影響や、放出されるナトリウムイオンの生体への影響は、in vitro で評価しておらず、臨床応用への課題である。
|