研究課題
ペリサイトを中心に,熱性けいれん(FS)によるてんかん原性に対する免疫学的機序の関与を検討し,てんかんや認知機能障害の発症を予測するマーカーを探索する.本研究は(A)ペリサイトマーカー解析,(B)フローサイトメトリー(FACS),(C)サイトカイン/ケモカインの網羅的解析の3本立てで実験を進めている.昨年度と同様、本年度もFSだけでなく他のけいれん性疾患にも対象を拡大し,特に(B)を中心に行った.FACSを用いて対象疾患の末梢血単核細胞(単球,CD4/CD8T細胞,NK細胞,B細胞,NKT細胞)のLPS刺激によるサイトカインの反応性の違いを検討した.(1)複雑型(重積,群発)FSで発作前後の検体で評価した.結果は発作後に速やかにIL-1βの低下が確認され,細胞内モノサイトがけいれんに密接に関与している可能性が示唆された.(2)てんかん性脳症の代表である,West症候群の各病相の検体で評価した.CD8陽性T細胞であるIL-1β,IL-1受容体拮抗薬(IL1RA)陽性単球,およびIFN-γの割合が,非けいれん群よりも有意に上昇していることが確認された.また急性期と慢性期群で比較すると,IL-1RA,CD4陽性IFNγが慢性期に有意に増加していた.さらに後遺症あり群は,後遺症なし群と比較するとCD8陽性T細胞とCD4陽性T細胞で細胞内IFN-γとIL-6が有意に低下していた.陽性細胞の比率と特定のサイトカインの血清レベルとの間に相関性は確認されなかった.FSおよびWest症候群のけいれん発作の発生機序に,IL-1βを主とした細胞内モノサイトが関与している可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
ペリサイト・血液脳関門に関連した論文がアクセプトされた.FSは罹患数が多く前方視的に検体を確保できるため,対象数を増やすことができデータの確実性が期待できる.引き続きFS,中枢神経感染症,てんかん性疾患群に対する免疫学的データを集計していく.
FSを中心としたけいれん性疾患の症例を集積し,血清/血漿,髄液を用いたペリサイトマーカー解析,フローサイトメトリー,サイトカイン/ケモカイン解析による網羅的プロファイリングを継続する.またin vitro実験を検討しているが,技術面で補強が必要な状況にある.当施設医学総合研究所に所属する技術者の協力も得て進めていく.また学会発表,論文執筆も並行していく.
主な理由はWeb開催の学会参加が大多数を占め,旅費分の余剰が出たことである.次年度は国内外で現地開催される学会に積極的に参加し,研究の成果物を公表していく予定である.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Journal of Clinical Medicine
巻: 11 ページ: 447~447
10.3390/jcm11020447
巻: 11 ページ: 6042~6042
10.3390/jcm11206042
Cureus
巻: 14(11) ページ: e31138
10.7759/cureus.31138