①化学療法耐性株の作成:5種類の細胞株(TS、GL261、U251、U118、U87)に対して、耐性株を作成した。当初の予定ではTMZ: テモゾロミドを用いる予定だったが、並行して神経膠腫に対して臨床で使用されうるPCV:プロカルバジン、ACNU:塩酸ニムスチン、VCR:ビンクリスチンも加えた4剤に対して、それぞれ耐性株を作成した。うち、U87は化学療法剤への耐性が弱く、有効な耐性株の作成が困難であったためその後の実験には用いなかった。 ②脳腫瘍モデルマウスの作成(予備実験):定位脳手術の技術を用いて、モデルマウスの作成に習熟した。 ③ヒト脳腫瘍検体での免疫細胞の評価:腫瘍検体を用いて浸潤白血球を評価するために、flow cytomettyの準備を行った。パネルの作成や腫瘍検体から白血球を抽出するための条件設定と予備実験を行った。 ④グリオーマ細胞株でのmRNAの発現評価:作成した化学療法剤耐性細胞株を用いて、IL-34・CSF-1・CSF-1Rの発現量の変化をreal time RT-PCRを用いて評価した。 ⑤IL-34ノックダウンによる細胞生存への影響評価:siRNAを用いてIL-34の発現をノックダウンし、化学療法剤への感受性と細胞増殖への影響を評価した。 まとめ:特定の細胞株において化学療法暴露後にIL-34の上昇がみられることが示された(特に、GL261におけるACNU暴露後)。しかしながら、その上昇は軽度であり、また臨床で最も使用されるTMZではIL-34がほぼ上昇しないことがわかった。ゆえに、「悪性グリオーマにおいてIL-34は、有望な治療標的分子とはいえない」、と考える。
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